「ガンダムが人生の優先順位でいちばん上」という31歳が作り上げた「圧倒的」趣味部屋。夢と現実、葛藤の日々を越え見つけたバランス

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そうして歯科資材の営業職を経て、現在は建築系の仕事をしている。体力的にも時間的にもハードな日々だが、世間を知り、収入もアップ。社会人としての自信がついてきた。

「ガンダムは本業ではなく、余暇に楽しむものになりました。でも仕事以外の時間はガンダムに全振りしています。平日は仕事から帰ってきてから、夜にYouTubeの撮影とか編集。

そもそも動画をつくる前に、まずガンプラを組み立てなきゃいけないですし。土日はスケジュールを空けて、制作や撮影、アップの準備。ほんと、1分1分が貴重です」

彼が運営するYouTubeチャンネル「タカハシラボラトリー」は、ガンプラを中心とした趣味チャンネルとして名が知られるようになり、収益も上がるようになってきたそうだ。

「ガンプラを買うのにも、この趣味部屋を整えるのにもお金がかかるので、本業とは別に収入があるのは自分への安心に繋がっています。プラスマイナスゼロかもしれませんけど(笑)。動画を通じてガンダムの素晴らしさを共有できるのが嬉しいです」

誰にも邪魔されない“趣味部屋”をつくる夢

「ガンダムが人生の優先順位でいちばん上にある」と彼は言う。その言葉には迷いがない。

「うん、やっぱりそう思います。だからといって、ずっとひとりで生きていこうとは思ってないですよ。僕の趣味への熱量を理解してくれる人であれば、パートナーがいてもいい。もちろん相手にも大切なものがあると思いますし、お互いを尊重できれば問題ないですよね」

社会人として、仕事と趣味の優先順位を切り替えながらバランスをとるように、対人関係と趣味の両立はできると、タカハシさんは考えている。それは「相手が理解してくれるならOK」という一方通行の考えではない。

「最初に自分のことをきちんと話して、分かってもらうことが、大事だと思っていて。たまに、大事なコレクションをパートナーに捨てられたという、マニアの悲劇を聞きますけど。ちょっと不思議なんです。『夫婦になるのに、ちゃんと自分のことを話して、分かってもらっていなかったのかな』って思うので」

部屋の様子
圧巻の「積みプラ」(プラモデルの箱を積み上げたもの)。プラモデルは組み立てる 前のパッケージも重要(撮影:今井康一)

タカハシさんは、歴史あるガンダムのハードなマニアでありながら、相互理解を前提としたパートナーシップを、ごく自然にイメージできる「令和の若者」でもあるのだ。では、将来パートナーや家族ができたら、このガンダム部屋に一緒に住む可能性はあるのだろうか。

「それは……無理ですね。やっぱりこの空間は、ガンダムのためだけの場所なんです。他のものが混ざってしまうと、どっちも中途半端になる気がして。

だったら、家族で暮らすための家は別に用意して、ここは好きなことに全振りする場所であり続けたい。そのために月々6万5千円という無理なく維持できる家賃の部屋を借りているんです」

笑顔でガンダム愛を語るタカハシさん
笑顔でガンダム愛を語るタカハシさん(撮影:今井康一)

ガンダムという絶え間なく拡張する世界と、自分自身の生活。そのふたつを、どう共存させていくのか? タカハシさんが選んだ答えは、「混ぜる」のではなく「並べる」だった。

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