
バッテリー駆動のEV「ミニ・ジョン・クーパー・ワークスE」と「ミニ・ジョン・クーパー・ワークス・エースマンE」が発表されたのは、2024年10月。
デリバリーがそろそろ……という2025年5月に、イギリスでテストドライブする機会にめぐまれた。
「ミニ」が、そもそももっていた特徴を想い起こさせてくれるモデルだった。

1959年に登場して2000年まで生産されたオリジナル・ミニを運転したことのある人なら、すぐに思い出せるだろう。
クイックなステアリングと車体がほとんどロールしない足まわり。
そこが鮮烈な記憶として残るオリジナル・ミニ。いや、記憶というより、いまも楽しんでいるひとをしょっちゅう路上で見かける。
本国の広報担当者が「このあいだ東京にいったら、クラシック・ミニ(と彼らは呼ぶ)がたくさん走っているのでビックリしました」というぐらい。
今回の2台の電動ミニも、オリジナル・ミニと印象が似ているような気がした。運転感覚だけではない。もっと広い視野で見ても、開発の考え方に、近いものがあるんじゃないかと、私には感じられたのだ。

ガソリンエンジン車の歴史をたどると、高性能車が生まれるきっかけは、「もっとパワーがほしい」「もっとおもしろいクルマに乗りたい」というクルマ好きからの希求に応えてのもの。それはミニに限ったことではない。
大衆車をベースにしたスポーツモデルが多いのは、市場の裾野が広いからという事実もある。
しかし、エンジニアの理想を注ぎ込んで高額になってしまっては市場を失う。別の面からみると、理想と現実の線引きをどこにしているのか、そこも興味をかきたてる部分だ。
マーケットの期待に応えた元祖クーパー
1959年に登場したオリジナル・ミニの場合は、チューニングを受け付ける基本設計のレベルの高さと、市場のポテンシャルが背景にあった。
このころは戦争の傷跡も癒えてきていたし、兵器に使われていた鋼材も民間に出まわるようになっていた。工業も市場も、立ち直りを見せていたのだ。
モータースポーツも娯楽として人気を盛り返しており、「コンパクトで速いクルマがあったら楽しそう」というマーケットの期待があった。
これに応えたものが、「ミニ・クーパー」だったといえる。
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