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台湾出身の記者が抱いた、沖縄が語る「平和」への疑問。識者たちの言論に覚えた強烈な"違和感"

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ただ、筆者は宮城氏の発言をイベント中のただの失言だったと割り切ることはできなかった。というのも、実はこの7年前の2016年にも、沖縄タイムスの人と同様のやりとりをしていたからだ。

当時、早稲田大学の大学院生であった筆者は、朝日新聞社が大学に提供していた講義を受講していた。その講義の一環で、沖縄タイムス東京支社の記者がゲスト講師として登壇した回があった。講義終了後には、同記者と一部受講者による懇談の場が設けられ、そこでは沖縄の基地負担や普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設が話題となった。母方の祖母が那覇出身であったこともあり、もともと沖縄に関心を持っていた私は、その懇談会に参加した。

当時の日本社会では、今ほど台湾有事への関心は高まっていなかった。台湾問題や東アジアの安全保障に関心のある人たちの間で、台湾情勢の緊張が高まりつつあることや有事の抑止について議論される程度にすぎなかった。

そんな環境だったせいもあるだろう。くだけた食事の席であり、私が一学生という立場だったこともあるかもしれない。「沖縄の米軍基地や自衛隊の配備が強化される背景には、今後緊迫が予想される台湾情勢もある」と私が言ったところ、その記者はこう言い放った。「台湾が、緊張を高めて迷惑をかけるようなことをしなければいいだけだ」。

台湾は戦争を起こそうとはしていない

この考え方は、沖縄側の視点に立つと理解できなくもない。かつての激しい地上戦で県民の4人に1人が犠牲になり、二度とその悲劇を繰り返さないことを願う一方で、戦後も重い基地負担を負わされ続け、戦争のリスクになおも晒されている。近隣で余計なことさえ起きなければリスクは減り、基地負担も軽減できる。「台湾はしっかりしろ」と言いたくなるのだろう。

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