"一時的な乱れ"か? それとも"必然"か? トランプ大統領の《歴史的意義》を見極め「日本の針路」を定めよ

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トランプ大統領の政策の歴史的な評価は2つに分かれる。そのどちらであるかを見定めることが日本の針路を決めるうえで重要だ(写真:ブルームバーグ)
ドナルド・トランプ大統領による一連の破壊的政策は「歴史の一時的な乱れ」とも解釈できるが、アメリカ社会に内在していた矛盾が表出した「歴史の必然」とも捉えることができる。このどちらであるかによって、日本の対応の仕方も大きく異なるものとなる――。野口悠紀雄氏による連載第149回。

「歴史の一時的な逸脱」であってほしいが…

現在、アメリカで進行している、トランプ大統領による一連の破壊的政策と政治的扇動をめぐって、われわれは根本的な問いに直面している。それは「これはトランプという特異な人格の政治家がたまたま引き起こした歴史の一時的な乱れにすぎないのか。それとも、歴史の必然であり、われわれが見ているのは新しい時代の始まりなのか」という問いだ。

このどちらかであるかによって、対処の方針も大きく変わる。悪夢のような一連の事態を見ていると、多くの人は「これが歴史の一時的な逸脱であってほしい」と強く望んでいることだろう。しかし、後で述べるように、それを否定する事実も存在する。

この問いは、民主主義制度、自由経済、知の尊重といった現代国家の根幹に関わるものだ。トランプ大統領の行動をどのように評価するかは、アメリカの未来、さらには自由主義的秩序の将来をどう見通すかという根源的な判断に直結している。

まず、この現象を「一時的な乱れ」と捉える立場から見てみよう。この見方を支持するのは、アメリカの政治経済制度の基幹がいまだ機能しているという事実である。とりわけ、市場の反応がトランプ大統領の行動を制約する実効的な力となっているという事実だ。

例えば、4月に発表された相互関税措置によって、ドル、株価、債券価格が同時に下落するという「トリプル安」状態が発生し、トランプ政権は上乗せ関税を90日間凍結せざるをえなくなった。

第2次トランプ政権のこれまでの交渉経緯を見ると、トランプ大統領の行動は「ディール(取引)」として読み解くことができる。

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