実は200を超える自治体に不動産業者が「いない」リアル。空き家対策や地方再生などに影響も。熱海の事例から《不動産業の未来》を考える

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渚ゆの建物
渚ゆの建物は築60年ほどの元飲食店。2階部分の床を抜いて吹き抜けにして延床面積約30㎡とは思えないほどの開放感を演出(写真:筆者撮影)

地域の不動産会社に求められるもの

生き残りに必要なのは従来の右から左を脱する多角化ということだが、そこに必要なのはコンサルティング能力とまち全体を見る目だ。

仲介は他人のお金を右から左に動かすだけでリスクはないが、自分たちで借りる、買うとなると出費が伴う。さらにリノベーションも行うとなると失敗はできない。

これまでになかった物件を扱う場合には前例がないだけに値付けひとつが難しく、借りてもらうためには従来とは違う形での情報発信も必要だ。

渚町の空き家
マチモリ不動産では渚町の空き家を購入、宿などとして使う計画をたてている。風呂なし物件だが、渚ゆが使えれば不利にはならないという(写真:筆者撮影)
改築中の現場
100㎡ほどの広いワンルームの宿泊施設に改修を予定している現場。屋上があり、そこからの眺望も売りになるという(筆者撮影)

地域の不動産価値を維持しないと自分たちが食えなくなると考えると、まち全体の価値を上げる努力も必要になってくる。

そのため、マチモリ不動産では若い面白い人たちに入ってきてもらおうと収益にはならないことを承知の上で2万~3万円の物件を仲介することも。

これからの地域の不動産会社が本気で生き残ろうと考えたら、コンサルティングに加え、積極的にまちづくりをしていくことが必要になってくるのである。

実際、マチモリ不動産は熱海のまちづくり会社machimoriの不動産事業を2019年に別会社化したもの。三好さんは2012年以降プロボノとして熱海に関わり続けてきており、熱海の変化をつぶさに見てきた。その知見が今に生きているというわけだ。

だが、これは熱海だけの話ではない。国交省は2022年度に「地域価値を共創する不動産業アワード」なる賞を創設。これは空き家などの遊休不動産を活用、新たな価値を地域と一緒に生み出してきた活動を表彰するもので、これまでに全3回、全国28団体が受賞している。

受賞した活動からは不動産業者、不動産管理会社がまちづくりに関わり、地域でコンサル的な役割を果たし始めていることがわかる。

国交省では表彰するだけでなく、ほかの地域、不動産業者にもその気になってまちづくりに関わってもらおうと受賞者などを講師に「地域価値共創シンポジウム」を開催してもいる。

次ページまちづくりに関わりたい人の参入が増えれば
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