実は200を超える自治体に不動産業者が「いない」リアル。空き家対策や地方再生などに影響も。熱海の事例から《不動産業の未来》を考える
冒頭に挙げた国交省の不動産業者の事務所数の減少というデータが掲出されたのも上述の表彰につながる「不動産業による空き家対策推進プログラム」に関する資料で、そこには「媒介業務に含まれないコンサルティング業務の推進」などという言葉が出ている。
業務内容に応じて仲介料以外のフィーの設定を可能にすることも含め、不動産業者にコンサルタントとしての機能を期待しているのである。
動く不動産業者が「いるまち」と「いないまち」
同様の動きは業界団体にもあり、全宅連では早期に事業継承について準備するという啓蒙活動などに加え、タウンマネジメントスクールを開催、空き家活用に取り組む事例紹介などの冊子を作るなどしてきた。
不動産業界団体を束ねる公益財団法人不動産流通推進センターは2025年5月に「不動産コンサルティングプラス」なる雑誌を創刊した。あの手この手でコンサルのできる不動産業者を増やし、空き家や衰退する地域に歯止めをかけようとしているのである。

だが、実際のところ、そうした活動をしている、関心を持っている不動産業者はまだまだ少数。がんばって数え上げても日本全国で数十社というところだろうか。特に高齢化が進む小規模な不動産業者が新たなチャレンジに関心を持つことは少ない。
その状況の先に予想できるのは都市部とそれ以外という格差に加え、動く不動産業者が「いるまち」と「いないまち」というもうひとつの格差である。
同じ都道府県内、いや、市区町村でもまちに関わろうとする不動産業者、関係者がいるエリアかどうかで地域のこれからに差が出てくる可能性があるというわけである。
やる気のある不動産業者のいない地域には危機だが、一方でやる気がある不動産業者からすれば周囲にライバルが少ない、チャレンジしがいのある状況とも言える。
これまで不動産業はどこかグレーな、楽して儲かる商売のように見られることも無きにしも非(あら)ずだった。だが今後は、楽をしようと思ったら儲からないが、やる気を出して知恵を絞れる人ならできることは増えていくだろう。
近年、まちづくりに関わりたいという人が増えているが、そのためには不動産業に関わるのが早道かもしれないのである。
ちなみにすでに不動産業者がいない自治体はどこかを教えてもらえないだろうかと国土交通省に電話をしてみたが、教えられないと言われた。ここまで読んでくださった方なら教えにくい内容であることはおわかりいただけよう。だが、知りたいのは私だけではないはずだ。
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