≪山尾騒動にも言及≫玉木雄一郎「消費税の一律減税は、安定的な賃上げ環境を作る最善策」(前編)
塩田:トランプ大統領は、新しい世界の構造について、長期的な絵を持っていますか。
玉木:明確な世界の将来像はないのではないでしょうか。「Make America Great Again」なので、まずアメリカをどうしようかと考えて、関税政策を取っている。ただ、結果としてこれで一番痛むのはアメリカで、この政策の中長期的な勝者は中国になる。
そうなると、自由貿易やグローバルの世界の秩序でアメリカが引いたところの空白は、中国が埋めていくという感じがします。仮にアメリカが各国との関係でうまく関税をマネージしたとしても、一回、失われたアメリカの信用、信頼は戻らない。
この間亡くなったジョセフ・ナイさん(元ハーバード大学教授、元アメリカ国防次官補)が「軍事力でないソフトパワー」という有形無形の力を提唱していましたが、国としての信頼とか、制度に対する信頼も含め、アメリカが失ったものは大きいのでは、と思いますね。
日本はエネルギー自給体制の強化を
塩田:トランプ再登場は、日米の経済関係、軍事同盟にどんな影響があると思いますか。
玉木:「自分の国は自分で守る」という体制に、日本は備えなければいけない。アメリカとの関係はこれからも重要ですが、それに全体重を乗せることは難しくなってくる。安全保障も日米同盟基軸ですが、「自分で守る」という意思と能力を持つことが大事です。
経済的にはエネルギーです。わが国の再生エネルギー、原子力発電、水力の三つを合わせたエネルギー自給率は10数%です。主にアラブ諸国から輸入する化石燃料を使った火力発電は、カーボン・ニュートラルの観点からはダメなわけで、将来どうするのか、解がない。
本当に日本が一番やらなければいけないのは、エネルギー自給体制の強化です。化石燃料に対する支払いで、毎年約30兆円が海外に所得移転している。日本はほかにグーグル、アップル、アマゾンなどに払っているデジタル貿易の赤字が7兆円になっている。富がどんどん外に出ていって、国内投資も進まない。この態勢を見直すきっかけにすべきです。
今こそエネルギー自給率50%、食糧自給率50%という大きな国家戦略を立てるべきです。食糧は今、40%ぐらいで、あと10ポイントぐらい上げる必要がある。エネルギーは、既存の原発はちゃんと動かす。再生エネルギーもやったらいいけど、核融合の研究を進めていくとか、新しい技術で自給していくことが必要です。
宇宙の開発は最近、みんなが言っていますが、国民民主党は海洋国家として海や海底の開発を進めることを提案しています。日本は海のEEZ(排他的経済水域)を入れると、世界で6番目の面積です。加えて深い海があり、実は体積は世界で4番目です。
イギリスは北海油田があるから、エネルギー自給できる。中国が尖閣諸島にちょっかいを出し始めたのは、1969年にあの周辺で石油が出るかもしれないという国連の調査が出てからです。われわれは広大な海、あるいは海底の探索と開発をもっと戦略的、計画的にやるべきです。
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