したがって、地政学リスクが勃発し、世界の金融危機となり、リスク回避から、すべてのリスク資産が暴落するというリスクシナリオを警戒する必要は高まったといえる。
中東、イラン、インド・パキスタンでも、あるいは中国周辺(現時点ではこの可能性は低いが、潜在的に)、そのほか世界中にリスクが拡散し、どこかで、意図せざる事件が起こる可能性は極めて高くなっているといえる。このような混乱、混沌、無秩序の地政学環境の中では、これらの主要国以外の局地的なプレーヤー、テロリストたちにとっては、絶好の環境であり、テロが金融危機を起こす可能性は極めて高い。
第3のトランプ大統領のリスクカテゴリーは、アメリカの内政問題だ。思ったよりも早く目立った形で、内乱が起きてしまったが、ロサンゼルスでの暴動への州兵派遣は、どこかでいったんは収まるだろう。だが、こんなことで、海兵隊の派兵という大事件にしてしまっているようでは、次は本当に内乱になってしまう可能性もある。
ハーバード大学の件といい、トランプ政権は、ボヤを大火事に自ら仕立て上げるのが得意であり、非常に危険だ。
金利の高止まりによる債券価格の下落に注意
そして、経済政策の危険性は、多くの識者が議論しているが、トランプ減税の実現方法である。アメリカの債務上限をどうするか、というテクニカルな問題にとどまらず、FRB(連邦準備制度理事会)議長人事への介入、下手なスタンドプレイ的な人事ニュース(スコット・ベッセント財務長官を次のFRB議長にするというニュースなど)、これは通貨ドルの信任を自ら壊すものであり、米国債への信用にも直結する。
さらに、インフレ率がそこそこ高止まりすることから、ジェローム・パウエルFRB議長においては利下げをしない可能性も高い。これはもちろん、トランプ大統領の横暴的な行動を誘発する。
だが、それ以上に重要なのは、金利が予想外に高止まりするということだ。市場の見通しが外れて、長期の債券価格が下落する可能性があり、信用リスクが高まっているところに、金利のほうからのファンダメンタルズ的にも価格が下落するとなると、米国債の売り仕掛けは起こりやすくなるし、それを恐れて、世界的に米国債の買い控えが起こる。米国債の下落シナリオが実現する要素はそろっているのである。
今回の議論をまとめると、今後の日本国債下落リスクシナリオとして、もっとも危険なのは、海外発の世界的金融危機から、その一環として、日本株も日本国債も売られるというシナリオである。
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