ブルガリアのルメン・ラデフ大統領は民意に配慮し、ユーロ導入の時期をめぐる国民投票の実施に含みを持たせている。いわばガス抜きを図ろうということだが、この期に及んでの導入の延期は、ブルガリアの国際的な面子を潰す。またEUは、そもそも可能な限り早い段階でのユーロ導入とそれに向けた構造改革を加盟国に義務づけている。
現実的な対応策は、リトアニアが行ったような行政的な対応だ。リトアニアは2015年からのユーロ導入が認められた際に、前年の2014年8月から半年間、モノの値札に当時の自国通貨であるリタスとユーロを併記することを義務づけた。そして、便乗値上げが発覚した際は、その事業者の名前を公表したうえで罰金を科すことにした。
先述のとおり、当時のユーロ圏はデフレ状況にあり、マクロ的な流れとして、リトアニアでは便乗値上げは起きにくい状況だったと判断される。それに比べると、現状のブルガリアはロシアショック後の高インフレ局面の渦中にあり、便乗値上げは起きやすい環境と考えられる。それでも、行政的手法による価格抑制策は一定の意味を持とう。
貿易赤字のブルガリアには安定した通貨が必要
ブルガリアの経常収支はほぼ均衡しているが、一方で貿易収支は赤字であるため、本質的には供給過少・需要超過の経済である。

そうした経済は、強く安定した通貨を有していることが望ましい。経済合理性に鑑みればこのタイミングでのユーロ導入は断行すべきだが、それを許す政治的な余裕が今のブルガリアにあるかは不明だ。
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