「第2次世界大戦を変えた男」の"その後の運命" 戦争犯罪の責任を問われた「天才作戦家」マンシュタイン

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ゆえに、マンシュタインは、国力とイデオロギーの衝突と化した世界大戦で「罪」を犯したとされ、「裁かれた元帥」の汚辱にまみれ、「見すぼらしく、いつも言い訳や逃げ口上を考え」ねばならぬ窮境におちいったのであった。

マンシュタイン評価の変遷から読み解けること

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それでも、マンシュタインは極刑をまぬがれ、自由の身になったのちには、過去の演出に努め、ひとたびは世界的な名声を得ることに成功した。にもかかわらず――このイギリス軍高等軍法会議より七十余年を経た現在のマンシュタイン評価は、かつてのごとき、完全無欠な「名将」というものではない。

軍人倫理の問題は措くとしても、マンシュタインは、作戦・戦術レベルの能力はともかく、戦略、なかんずく総力戦において、いかにリソースを配分し、主戦場で勝利を得るか、また敵国民に対してどのような鎮静化策を取るか(それは現代戦における重要案件である)という点に関しては、必ずしも優れていなかったのではないかとの疑義が呈されているのである。

こうしたマンシュタイン評価の変遷は、この間の歴史を反映し、また第二次世界大戦以降のさまざまな国際紛争に如実に示された戦争の性格、軍人の職能の変化が集約されたものとみなすことができよう。

大木 毅 現代史家

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おおき・たけし / Takeshi Ooki

1961年東京生まれ。立教大学大学院博士後期課程単位取得退学。DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生としてボン大学に留学。千葉大学その他の非常勤講師、防衛省防衛研究所講師、国立昭和館運営専門委員等を経て、著述業。『独ソ戦』(岩波新書)で新書大賞2020大賞を受賞。主な著書に『「砂漠の狐」ロンメル』『戦車将軍グデーリアン』『「太平洋の巨鷲」山本五十六』(角川新書)、『ドイツ軍攻防史』(作品社)、訳書に『戦車に注目せよ』『「砂漠の狐」回想録』『マンシュタイン元帥自伝』(以上、作品社)など

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