「部下と話が噛み合わない」と悩んだら試したい”哲学的思考”――職場のコミュニケーションを有効なものにするための3つのアプローチ

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「哲学的思考」は、物事の構造を捉え、正確な言語化をすることができる思考法で、職場のコミュニケーションをシンプルかつ有効なものにするために役立ちます。

私は、哲学的な思考には、3つの側面があると考えています。

この考えは、「哲学対話」(哲学的な思考を活用した対話のワークショップ)の源流をつくった哲学者のひとりであるマシュー・リップマン氏の思想に強く影響を受けています。

(1)批判的に考えること
(2)創造的に考えること
(3)関心にもとづいて考えること

それぞれ見ていきましょう。

「批判的」とは悪く言うことではない

「批判的」という語は日本語で言うと、「非難する」「否定する」「悪く言う」といったネガティブなイメージが先行する印象があります。しかし、これはもともとの意味からは外れています。

「批判」とは、本当のことを目指して物事を吟味すること、物事を深く理解し適切に判断を下すことを目指す語だからです。

吟味するとは、ある物事をただ当然のものとして受け流してしまうのではなく、前提を疑い、「本当にそうか?」とあらゆる方向から検討することです。

たとえば「蛙の子は蛙」ということわざがあります。小さい頃は親に似ていなくても、結局は親に似たり、親の進んだ道を歩んだりするというたとえです。

これに対して、さまざまな問いを立てることができます。

・「鳶が鷹を生む」ということわざもあるわけで、これは本当に普遍的だといえるか?
・遺伝的要素だけでなく、環境や教育、個人の努力によって、親を超える可能性はないか?
・このことわざは、自己肯定感を下げ、成長意欲を阻害する可能性はないか?
・そもそも、子が親を超えるとはどういうことか?

批判とは、こんなふうに、さまざまな問いを立てて、真実に迫ろうとすることです。したがって、否定だけではなく、何かを肯定したり、分析的に考えていたりすることも「批判」の一部にほかなりません。

ここで気をつけたいことは、批判は「論破」という態度とは、まるで異なることです。「前提を疑う」という点は、批判にも論破にも共通します。論破も、無反省な根拠や主張の妥当性を問題にしているからです。

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