「大きくて美しい法案」を巡りイーロン・マスクがトランプ大統領を公然と批判。あっさりと崩壊した蜜月関係に修復はあるのか?
一方、トランプ大統領は、豹変したマスク氏からの批判に対し、冷静に対処しているように見える。だが6月5日、トランプ大統領は、「大きく美しい法案」を非難し続けるマスク氏と「素晴らしい関係」を保てるかどうかはわからないと述べた。翌6日にも、マスコミからマスク氏について聞かれた大統領は「私はあまりそういうことに興味がない」と答え、「ただ彼の幸運を祈るだけだよ」と返答した。
マスク氏はその間もXで、「私がいなければトランプ氏は選挙に負け、民主党が下院を支配し、共和党は上院で51対49になっていただろう」と述べ、さらに「来年11月(の中間選挙)に、アメリカ国民を裏切ったすべての政治家を解雇させてやる」とまで述べて息巻いた。
6月7日、マスク氏の中間選挙に関する発言について聞かれたトランプ大統領は、もしマスク氏が税制法案に賛成する共和党議員に対抗し、民主党議員を支援するならば「非常に深刻な結果」に直面するだろうと答えている。
「非常に深刻な結果」が何を指すのかは言わなかったトランプ大統領だが、この数日前には、自身が設立したSNSのTruth Socialで「何十億ドルもの予算を節約する最も簡単な方法は、イーロン・マスクの政府補助金や契約を打ち切ることだ」と述べている。
マスク氏も、Xのフォロワーの投稿でトランプ大統領の発言を知り、「私の、政府との契約解除に関する大統領の声明を受けて、SpaceXは直ちにDragon宇宙船を退役させることにする」と返答した(これは後に削除された)。
NASAにとって不可欠なSpaceX
まるで子どものケンカのようなやりとりになってきたマスク氏とトランプ大統領の罵り合いだが、実は、SpaceXによる貢献がなくなれば、NASAにとっては厳しい状況になる可能性が高い。
NASAは現在、国際宇宙ステーション(ISS)への飛行士の輸送などで実質的にSpaceXに依存している状態だ。もし、マスク氏が本当にその契約を破棄するとなれば、ISSの運用も終了せざるを得なくなってしまう。
さらには、アメリカの有人月面着陸計画「アルテミス」においても、飛行士らを月面に着陸させ、さらに月周回軌道に帰還させるために、SpaceXが現在開発中のロケット兼宇宙船Starshipを使うことが予定されている。アメリカ軍もまた、国家安全保障関連の機材を軌道上に打ち上げるためにSpaceXのロケットを使っている。軍に通信手段を提供する企業には、衛星通信企業のStarlinkも含まれている。
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