「大きくて美しい法案」を巡りイーロン・マスクがトランプ大統領を公然と批判。あっさりと崩壊した蜜月関係に修復はあるのか?

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そして5月28日には、マスク氏は特別政府職員としての役割を終えることを認め、「(政府の)無駄な支出を減らす機会を与えてくれた」と、トランプ大統領に感謝の言葉を述べた。トランプ大統領も、マスク氏は今後も「友人」だと述べ、今後も大統領のアドバイザーとして、政府との関係を続けることになるだろうと、両者の良好な関係を強調していた。少なくともこのときまでは。

トランプ大統領 イーロン・マスク
DOGE退任で握手するマスク氏とトランプ大統領(写真:Francis Chung/© 2025 Bloomberg Finance LP)

大統領肝いりの「大きくて美しい法案」が火種に

6月に入ると、蜜月関係と思われたマスク氏とトランプ大統領の関係は急激に悪化し始めた。

その理由は、トランプ大統領が5月22日に提出した「One,Big,Beautiful Bill Act( ひとつの、大きく、美しい法案)」にある。この法案には、2017年に第1期トランプ政権が打ち出していた減税策の延長、国境警備費の増額、メディケイド(医療保険加入が困難な低所得者層)への就労義務の導入、そしてクリーンエネルギー税額控除の縮小が盛り込まれている。

ところが、アメリカ議会予算局(CBO)よると、この法案の税制条項では、2034年までにアメリカの財政赤字は3兆8000億ドルも増加すると予想されている。

DOGEの活動と矛盾するこの法案について、マスク氏はアメリカ・CBSのインタビューで「失望した」と述べ、「法案は大きなものにも美しいものにもなり得ると思う」が、「両方を実現できるかどうかはわからない」と、あくまで個人的な意見であることを強調しつつ語った。

イーロン・マスク
DOGE退任会見時のマスク氏(写真:Francis Chung/© 2025 Bloomberg Finance LP)

さらに、マスク氏は自身が所有するSNSであるXで、この法案はアメリカを「債務奴隷」に陥れる「ひどく忌まわしいもの」だと主張し、フォロワーに対して議員に電話をかけ「この法案を廃案にする」よう促した。また、別の投稿では「財政赤字を大幅に増やさず、債務上限を5兆ドルも引き上げないような新たな支出法案を起草すべきだ」と持論を述べた。

これ以降、マスク氏はDOGEとトランプ政権を離れて数日しか経っていないにもかかわらず、Xで数十件以上の投稿や投稿への返信で、この法案を批判し続けている。

もっとも、マスク氏がこれほど激しく法案を批判する本当の理由は、アメリカで電気自動車を購入する人に対して適用される、最大7500ドル(約107万円)の税額控除の仕組みが、前倒しで廃止されてしまうからとの指摘もある。自らのビジネスに有利になるようにすることもマスク氏がトランプ政権に関与してきた理由のひとつのはずだが、この法案が可決されれば、テスラ車の販売への悪影響は避けられない。

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