「基礎年金の底上げに厚生年金の積立金を流用するのか」と憤る人が知らない未来予想図…低年金の高齢者が生活保護を受ければ税負担は高くつく

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社会保障審議会年金部会で厚生労働省が試算とともに示した基礎年金の底上げ案によると、2024年の財政検証における過去30年投影ケースを基に、厚生年金積立金も一部活用しながら、基礎年金と報酬比例部分のマクロ経済スライドの調整期間を一致させる形で基礎年金の給付水準を底上げするならば、基礎年金2人分の所得代替率は33.2%、報酬比例部分の所得代替率は22.9%となって、両者合計の所得代替率は56.2%となるという。

基礎年金1人分の所得代替率は16.6%となり、これですべてが解決するわけではないが、老後の所得保障が公的年金で行われる度合いが増して、生活保護受給者になる高齢者がいてもその分生活保護給付は少なくて済む。

確かに、前述の通り、現行制度だとマクロ経済スライド終了時の報酬比例部分の所得代替率は24.9%で、それが22.9%に下がっているとも読める。マクロ経済スライドの終了年度も、現行制度だと報酬比例部分は2026年度、基礎年金は2057年度なのに比べて、厚生労働省の基礎年金の底上げ案だと両者ともに2036年度となる。

しかし、基礎年金と報酬比例部分を合計した所得代替率は、現行制度の50.4%から56.2%に上がることになる。厚生年金受給者にとっても全体の所得代替率は上がることになる。

しかも、基礎年金の底上げのために厚生年金積立金を「流用」しなかったら、厚生年金受給者は救われるのだろうか。実はそうではない。

基礎年金底上げに1兆~2兆円、生活保護ならそれ以上

なぜならば、底上げをせずに基礎年金の所得代替率が下がると、前述のように、高齢の生活保護受給者がそれだけ増えることとなり、それに伴い増加する生活保護給付のための追加的な税負担が必要となり、その税負担から厚生年金受給者も逃れられないのである。他人事では済まされない。

厚生年金加入者も基礎年金の所得代替率が上がるということは、それだけ基礎年金に投じられる税財源も増えることになるのは事実である。厚生労働省が示した試算では、この基礎年金の底上げのために将来必要となる税財源は年に1兆~2兆円という。この財源のメドを、与党も立憲民主党も示していないとの批判がある。

とはいえ、現行制度のままだと高齢の生活保護受給者が増えて、そのために必要となる追加の税財源は、年に1兆~2兆円では済まないことを示唆する研究結果もある。現行制度のままだからといって、もっと必要となると見込まれる追加の税財源のあては何も示されていないのである。

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