「基礎年金の底上げに厚生年金の積立金を流用するのか」と憤る人が知らない未来予想図…低年金の高齢者が生活保護を受ければ税負担は高くつく

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だから、この50.4%の所得代替率は、基礎年金2人分の所得代替率と報酬比例部分の所得代替率に分解できる。それも、2024年の財政検証で示されており、基礎年金2人分が25.5%、報酬比例部分が24.9%となっている。

ただ、就職氷河期世代を中心に、非正規雇用者が増えた。低所得の非正規雇用者は厚生年金に入れないことが多く、基礎年金しかもらえない。しかも、経済的に困窮していることなどから未婚者が、それ以前の世代に比べて多い。そうすると、老後は基礎年金1人分の給付しかもらえないことになる。

すると、先の所得代替率にして約12.75%(=25.5÷2)である。50%よりはるかに低いのである。

老後の生活保障を年金で行うか、生活保護か

しかも、この所得代替率は、「40年間、1カ月も欠かさず年金保険料を払い、基礎年金を1人分満額で受け取れる場合」である。年金保険料を納付しなかった期間に応じて年金給付は減額されることになっている。

すると、現役時代に低所得の非正規雇用者となることが多く、未婚のまま老後を迎える人は、低年金・無年金に直面することになる。

それが元で、生活保護受給者になる高齢者が増えている。今や、生活保護受給者の過半は高齢者世帯である。しかも、その生活保護給付の財源は、全額税金である。

要するに、基礎年金の所得代替率が下がると、低年金・無年金の高齢者が増え、それに比例して高齢の生活保護受給者も今後さらに増えることになる。

これが、基礎年金を底上げする動機である。老後の所得保障は、できる限り生活保護ではなく公的年金で行えれば、それを支えるために必要となる税負担はより軽くなる。

とはいえ、基礎年金の給付水準を底上げするための財源の一部に、厚生年金の積立金を充てることを想定している。だから、厚生年金受給者は損をするーーとみる向きもある。

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