【朝ドラ あんぱん】やなせたかし「軍隊で居眠り」驚く顛末 下士官になったやなせだが、思わぬ仕事が待ち受ける

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「最初の3日間ぐらいはお客さまあつかいでさしたることもなかったが、たちまちビンタの嵐吹き荒れる恐怖の内務班の生活がはじまった。ビンタとは要するにパンチである。印刷屋と鐘は叩けばいいと田辺製薬に勤めた時言われたが、今度はこっちが叩かれる番で、このビンタの強烈さは叩かれたものでなければ解らない。ボクサーのように顔が変型してしまう」

朝は起床ラッパで叩き起こされて、毛布をきちんと畳んで棚に並べることから1日がスタートする。うまくできなければ、すぐにビンタが飛ぶ。いや、うまくできない人が1人でもいれば、班全員が殴られたという。往復ビンタのときもあれば、革製の上靴で殴られることもあったというから、あまりにも理不尽だ。

そのうえ、下っ端は上等兵の世話もしなければならず、整理整頓、靴みがき、銃剣の手入れなど、命じられれば何でもやらなければならなかった。やなせも上等兵の服に縫物をしたり、靴下や下着の洗濯をしたりしていたという。

軍隊生活が意外と楽だったワケ

銀座でブラブラしていた学生時代や、ポスター作りに邁進した会社員時代から打って変わって、上官の命令には絶対服従という、恐るべき上下関係のなかに身を置くことになった。

それでも3カ月もすれば、身体も鍛えられて、ビンタも平気になってきたという。練兵場を走り回っても、以前のように息が切れることもなくなった。射撃の命中率も上がり、軍人として、仕上がりつつあったようだ。

もともと、やなせは生まれ育った境遇からして過酷だ。生まれてすぐ父を亡くし、母は再婚相手のもとへと去っていってしまった。伯父と伯母の家に身を寄せながら、快活な弟と比べては、中学時代は悶々と自分の存在について悩んだ。

時には「どうなってもいい」と鉄道の線路に横たわることさえあったが、やなせは好きな絵を描いたり、漫画雑誌を読んだりしながら、人生を投げることなく、どんなときも「希望」を探していたように思う。

生きていくためには、ポジティブにならざるをえなかった、やなせ。軍隊生活についても、こんなことに気がついたのだという。

朝ドラ あんぱん アンパンマン やなせたかし
現在の小倉(写真: kazukiatuko / PIXTA)
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