極貧ではないが、貯金できるほどの余裕はない。妻との旅行が楽しみだったが、4年前に伊豆に行ったのが最後。通勤用の50cc原付バイクは知人から譲り受けたものを10年以上使っている。
「何も買わない。どこにも出かけない。とにかく何もしない。今のような働き方がいつまでできるのか。老後を考えると不安です」

妻は家事代行とスキマバイトを掛け持ち
取材を終えようとしたとき、妻がアルバイトから帰宅した。家事代行とスキマバイトを掛け持ちしているという。
アプリ事業者が仲介するスキマバイトについては、本連載で、契約以外の仕事や早帰りの強制、企業側からのドタキャンなど、さまざまな問題があることを指摘してきた。
妻にスキマバイトについて尋ねると、「特に大きなトラブルはないのですが……」と言いつつも、次のような経験を話してくれた。
「ビラ配りの仕事のはずだったカラオケ店で、なぜか室内清掃をさせられました。『未経験者歓迎』と募集していた夜間の工場では、誰も仕事を教えてくれなくて。結局作業から外され、気まずい思いをしました」
夫妻の働き方にはある共通点がある。それは、いずれも第三者が介在する雇用ということだ。
ナオキさんの場合、実際の勤務先とは別に、間に請負会社や派遣会社が入っている。妻のほうも家事代行サービスやアプリ事業者などの有料職業紹介事業者が介在している。日本の雇用はいつの間にこんなに複雑になったのだろう。
ナオキさんは「昔の口入れ屋と同じ」と批判する。口入れ屋とは江戸、明治時代の職業あっせん業者のこと。人身売買やピンハネの温床になるとして禁止されたが、現在は規制緩和により、労働者派遣や有料職業紹介など一部事業の参入が認められた。
しかし、ナオキさんに言わせると「違法だったことが合法になり、堂々とやれるようになっただけ」だ。
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