「次期戦闘機はシステム・オブ・システムズだ」開発企業の一角イタリア・レオナルド幹部に聞く日本・イタリア・イギリス3カ国協同開発の行方

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――日本の三菱重工業は、機体など個々のパートを作ることはできても、それらを効果的に組み合わせるシステム・インテグレーションの設計や経験に乏しいと言われています。その一方で、BAEシステムズはインテグレーション能力があると思いますが、レオナルドはどうでしょうか。

レオナルドとJAIEC、BAEシステムズが(各国の機体メーカーの)リード・システム・インテグレーター(LSI)になっています。LSIは、リード・サブシステム・インテグレーター(LSSI)と呼ばれるサプライヤーと連携します。

3カ国はつねに友人であり続ける

LSSIは、(搭載アビオ・システムの)「ISANKE&ICS」(統合センシング、非打撃効果および統合通信システム)のことです(筆者注:次期戦闘機の搭載アビオ・システムのことで、三菱電機、イギリスのレオナルドUK、イタリアのレオナルドとエレットロニカの3カ国4社共同開発体制となっている)。つまり、LSIは、これらLSSIと違う産業分野の領域で協業することとなります。

――戦闘機の共同開発は、構想から実際に戦闘機が空を飛んで退役するまで、半世紀以上にわたる大規模な国家間プロジェクトであると思います。その間、日本とイタリアとイギリスはずっと親しい、パートナー国となりえますか。

はい。もちろんです。それが計画です。私たちはつねに友人であり続けるでしょう。これは私たち産業界が協力を強化できる良い機会です。非常に野心的なプログラムですので、私たちは友人でなくてはいけません。


以上がデ・サント氏へのインタビューになる。
サウジアラビアは同国人記者が2018年にトルコにあるサウジアラビア総領事館でムハンマド皇太子に近い男らによって殺害されるなど、人権問題がつねに取り沙汰されてきた。GCAPへの技術的貢献度や情報保全でも不安視する向きもある。
その一方で、サウジアラビアには潤沢なオイルマネーがある。サウジアラビアが参画すれば、日本とイギリス、イタリアは何兆円にも上る次期戦闘機の開発費負担を軽減できるだろう。
日本の国際政治学の大家、故・高坂正堯氏はその名著『国際政治』で平和の問題を論じる際には「力の体系(軍事力)」、「利益の体系(経済関係)」、「価値の体系(理念)」の3つのバランスに目を注ぐよう説いた。
明らかにイギリスとイタリアは「利益の体系」を重視して、サウジアラビアをGCAPに参画させることに前向きだ。一方、日本は「価値の体系」により重きを置いているように思える。
戦闘機の国際共同開発は、国際協調を基軸とする日本にとって、同志国やパートナー国と緊密に協力していくための大事な政策手段となっている。防衛装備や技術協力の取り組みの強化を通じて、パートナー国との中長期にわたる関係の維持、強化が図れるメリットがある。
2023年3月に来日したイギリスのウォレス国防相(当時)はGCAPについて、「短い恋愛ではなく結婚する」覚悟を説いた。結婚相手を選ぶよう、パートナー国選びには慎重であってほしいものだ。
〈インタビューの動画はこちら〉
高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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