「あるとき『日本舞踊をやってみたい』って思ったんです。当時、母親がお店をやっていたんですが、そこに来たお客さんに『この子は高校に行くより、舞妓になったほうがいいよ』って勧められたんです」
歴史が好きだった桐貴さんは舞妓のネガティブな一面も知っていたので、なりたいとは思わなかったが、母親はその気になった。
「あんた舞妓さんになるんやで」
と言われたし、周りの人たちにも言いふらした。
「母はそういうタイプなんですよ。人に言われると、すぐその気になってしまう。でもシングルマザーで育ててくれて、いろいろ苦労してきたのを見てきたから、期待に応えたい気持ちもありました」
京言葉の練習や下働きをした“仕込みさん”の期間
最初は1週間だけという話で、京都に体験修行に行くことになった。舞妓の世界では“仕込みさん”といって、デビュー前にお稽古や言葉づかいを覚える期間がある。
「中3の3学期から大阪から京都まで通いました」
“仕込みさん”はあえて“芋(ダサい)”格好をさせられる。犬のキャラがプリントされたシャツに長めのスカート、すっぴんで髪の毛は引っ詰める。眉毛も整えてはいけなくて、ゲジゲジのようにぼうぼうになっている女の子もいたという。
「そういう芋っぽい女の子が、だんだん洗練されていくのをお客様に見せる演出なんです。だから最初はあえて垢抜けさせない。徹底的に“原石”にされます」
デビュー前後の幼さや未熟さを楽しむのは、日本のアイドル文化に通じるものも感じる。
「お稽古場で踊りを学んだり、京言葉の練習をしたりします。『どす』とか『しといやす』とかを日常的に使えるようにします」
そういうレッスンだけではなく、下働きもさせられる。
姉さん(先輩舞妓)の忘れ物を届けたり、酔って帰ってこない姉さんを迎えに行ったり、生活面のサポートもさせられる。
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