「女性が家事だけに専念できる余裕は、この国にはもうない」と言われても…。ドラマ「対岸の家事」令和に“専業主婦”を丹念に描く意義
そんなある日、詩穂の住むマンションの隣の部屋に、2人の子どもがいる多忙なワーキングマザー・長野礼子(江口のりこ)が越してきて新たな風が吹く。
さらに育休取得中のエリート官僚・中谷達也(ディーン・フジオカ)とも近所の公園で知り合い、詩穂の日常に変化が。

知り合いができて喜んだのも束の間。礼子からは「専業主婦は絶滅危惧種」なんて陰口をたたかれ、中谷からは「女性が家事だけに専念できる余裕は、この国にはもうないんです」などと理論で詰められて面食らう。
しかし、強気に見えた2人はそれぞれ家庭でワンオペなことも多く、家事育児に追い詰められている状況にあった。そんな2人のピンチを詩穂が救ったことをきっかけに、ゆるやかに助け合える関係になっていく。
生き方や考え方が異なる“対岸”の相手であっても、困っている様子が見えたら迷わず駆け寄って手を差し伸べること。詩穂が実践するそんな姿勢は作品の主題でもあって、孤独を抱える個人をとにかく見逃さないという切実な思いに満ちている。
それでも彼女が専業主婦を選ぶのは…
家事育児の話がメインではあるが、決して子を持つ夫婦だけの物語ではない。妊活中に年配女性からハラスメントを受ける女性や、病を抱えた飼い犬を世話する独身男性など、さまざまな悩みを抱える人を広い視野でとらえた、立体的な人物描写が光る。
その中でも目を引くのはやはり主人公・詩穂の、穏やかでいて芯のあるキャラクターだ。
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