【野田佳彦・単独インタビュー(前編)】「なぜ食料品の消費税率ゼロなのか?」根底の思想と制度設計を語る

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塩田:民主党政権の野田内閣が2012年に消費税増税の方向に舵を切ったとき、小沢一郎元民主党代表らの反対派が集団離党し、民主党分裂という事態となりました。今回の消費税率引き下げ案には、立憲民主党内に反対論や異論はありませんでしたか。

野田:「次の内閣」の財務金融担当大臣、経済再生担当大臣、税調会長など、責任ある立場の人たちが集約し、整理して上げてきた。そのプロセスで、どなたも「これによって党を割っちゃいけないね」とおっしゃった。2012年のことが大きな教訓として残っている人が多いと思います。若い人たちも、ああいうことをやってはいけないと思っている。決まったことには従うという文化ができていると思います。今回は確信を持って決めました。

塩田:2021年の衆院選で、立憲民主党は当時の枝野幸男代表が消費税率の時限的な5%への引き下げを公約に掲げたのに、選挙前と比べて14議席減という結果に終わりました。

減税を唱えれば選挙に勝てるというわけではない

野田:減税を言えば選挙に勝てるかというと、必ずしもそうではないと思っています。私も1996年の衆院選で新進党にいて18兆円の減税を唱え、惨敗しました。あのときは新進党が突然、減税を掲げた。説明できないんです。説明できないことは通用しないと思います。社会保障と税の一体改革を掲げて戦った2012年12月の衆院選の敗戦は、説明できなかったからかどうかはわかりませんが、説得力がなかったんだと思います。

今回は、あくまでも臨時・異例の措置で、逆進性対策としては基本は給付付き税額控除が有効ですけど、即刻できないので、当面の対応と位置づけています。財源の問題は、法律で期限を決めるなど、責任ある態度で示していく減税だと思います。これからしっかり訴えていけば理解してもらえる可能性は高いと思っています。

塩田:2012年の首相としての経験があり、臨時・異例の措置で期限付きとはいえ、消費税の税率引き下げ案には、気持ちの整理がついていないのでは、という見方もあります。

野田:もちろん気持ちの整理をつけるまでは、いろいろ大変です。党内の議論を見ながら、最後は自分に回ってきますから。自分なりに整合性が取れている判断、納得の行く整理の仕方をしたと思っていますので、これから躊躇なくしっかりと訴えていきたいと思います。

自分で納得が行かなかったら、とても説明できません。第一命題は給付付き税額控除ですが、これは党内のコンセンサスだと思っていますので、早期に実現する。これが実現するなら、今回のゼロ税率案は途中で変えてもいいというぐらいのつもりです。

今、急がなければいけないのは超短期の政策です。すでにガソリンの暫定税率の廃止とか、例えば中小企業に対する資金繰りとか、パッケージで物価高対策、トランプ関税対策は打ち出しているのですが、足りないのは給付のところです。政府や自民党は、一律給付を言いましたが、強烈な批判があった。立憲民主党は単なる給付ではなく、給付付き税額控除の理念に合った給付の仕組みを提案しています。今年度内に国民1人あたり2万円の給付を行い、この給付金について所得税の課税対象とすることで、所得の多寡に応じた給付の仕組みです。

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