元なでしこ・宮間あやさん(40)突然の引退から9年。「大切なものを守るために、自分はどうなってでもがんばりたい」表舞台に戻ってきた理由

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なでしこジャパンは2027年の女子ワールドカップで世界一に返り咲くことを目指している。宮間の女子委員長補佐としての主な仕事は、いまの女子サッカー選手たちの環境を少しでもよくするように整備することだ。それに加えて、代々のなでしこが受け継いできたものを今の選手に渡していく役割も果たそうとしている。

今の現役選手たちといると、たまに「あやさんたちのときはどうだったんですか?」と聞かれるという。

「そんなときは、例えば『“奇跡の4部練”というのがあったよ。朝起きて浜辺を永遠に走って、ご飯食べて練習して、ご飯食べて練習して、ご飯食べて筋トレだよ』と昔の話をするんです。『絶対無理!』って即答されますけど(笑)。でも、無理でいいと思うんです。正直、私も無理でしたからね」

宮間自身は前編で書いたように、さまざまなものを犠牲にしてサッカーにすべてを捧げてきた。それが貫けなくなったことを理由に、ピッチを去った。だが、自分がそうだったからといって、Z世代の現役選手たちにそのやり方を押し付けることはしない。

「一番よくないのは知らないことなので、そういう時代があったということや女子サッカーの歴史をなんとなくでも知っているということが大切なんです。知ったうえで、選択肢を多く持って、自分自身が選び取ることが重要だと思っています」

サッカーに間違いはない

サッカーは1人ひとりの選手の選択の連続で成り立っている。宮間は「サッカーに間違いはない」と力を込める。

「サッカーは手を使わないこと、ファウルをしないこと以外は何をしてもいいスポーツ。映像を示しながら、『このシーンではこの選択はよくなかった』と指摘する指導者がいますが、その選択が間違っていたなんて誰にも決められないと私は思っています」

「もちろん、その判断が失点につながったらチームとして取り返すのは大変ですが、だからといって、その選択が間違っていたとは言えません。そのプレーがダメだと否定されれば、その選手はその先にあったはずの未来を見なくなってしまいます。そんなに悲しいことはないですよね」

宮間は、初めて会った日のように、まっすぐ前を向いて微笑んだ。

「サッカーは人生の縮図みたいなもの。サッカーにも、人生にも、間違いはないんです」

サッカーにも、人生にも、間違いはない(写真:今井康一撮影)
山田 智子 フリーライター・カメラマン

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やまだ ともこ / Tomoko Yamada

日本サッカー協会勤務を経て、2013年に独立。フリーのスポーツライター・カメラマンとして、東海地方を拠点にバスケットボール、サッカー、フィギュアスケートなどさまざまなスポーツの現場を飛び回る。『Number』『中日新聞』など各種媒体に寄稿するほか、愛知県のバスケットボールWEBマガジン『愛B café』を運営。競技の魅力だけでなく、アスリートの知見のビジネス活用やスポーツを通じた街づくりにも関心を持ち、現場目線での取材・執筆を行っている。

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