台湾にとっては、戦争の現実性よりも「関心の持続」のほうが切実な問題である。実際に戦争が起きるかどうかではなく、台湾が中国から脅かされ続けているという「状態」をいかに世界に訴え続けるか。台湾は「2027年有事説」を対外発信戦略の一環として、いわば台湾による「宣伝戦」として利用しているのであり、台湾側の実際の有事に対する「見積もり」とは乖離している。
安全保障を国際社会に大きく依存する台湾
台湾の対外発信には、しばしば国際社会の関心を呼ぼうとする意図が込められている。年に一度の漢光演習のシナリオにあった2027年といった具体的な年号の設定は、必ずしも台湾の政府が「その年に中国が台湾を侵攻する」と予測しているわけではない。
かつて漢光演習は10~20年先を設定し、オブザーバー参加したアメリカ軍将校に対して、中国との戦力差が大きく開いて「負ける」状況を見せることで、高性能な武器の購入につなげようとする狙いが強かった。だが、近年、あえて切迫した時期を明示することで、中国の脅威に対する備えと真剣な姿勢を対外的に示す狙いが強くなっている。
背景には、台湾の安全保障が国際的な関心と支援に大きく依存しているという現実がある。30年以上にわたって軍事力の増強を続ける中国に対し、もはや台湾単独では抑止力を十分に構築できない以上、アメリカや日本といった友好国が当事者意識を持って台湾の安全保障に関与してくれるようになることが重要となっている。
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