米・ドーピング公認大会「エンハンスド・ゲームズ」はアスリートを破壊に導く《人体実験》でしかない――五輪銀メダリストと医師が語る"怖さ"

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オリンピック以外では、2023年にITAは485件の潜在的なドーピング規則違反を調査し、168件に制裁を科したと報告している。いずれも氷山の一角だろう。

ドーピングの世界では、新たな検査法が確立されれば、それをすり抜けるような薬剤が開発される「イタチごっご」を繰り返している。

五輪・銀メダリストの見解は?

筆者がアテネオリンピック自転車競技・チームスプリントの銀メダリスト、長塚智広氏に話を聞くと、「競技直後に行われる検査では、新薬が検出対象に含まれていないため“陰性”と判断される。後日行われる検査で、利尿剤などの禁止薬を排出するための薬や、新薬の代謝成分が検出されることがある 」と言う。

「自転車競技では、新たな禁止薬物が発表され、規制が厳格化されると、レースの速度が一気に落ちることもある」らしい。

アスリートがドーピングにはまってしまうのは、勝利により金と名誉が手に入るからだという。長塚氏は「引退後にドーピングが判明して、記録を取り消されても、それまでに稼げばいいと達観している選手も大勢いる」と、打ち明ける。

1999~2005年にツール・ド・フランスを7連覇し、がん克服の英雄として称賛されたランス・アームストロングは、その典型だろう。現役時代から疑惑はあったが、証拠はなかった。

2012年、アメリカ反ドーピング機関(USADA)が大規模な証言と調査に基づきドーピングを認定し、1998年8月1日以降に獲得したすべてのタイトルを剥奪された。自転車競技の世界から永久追放された彼は、2013年にテレビ番組でドーピングを認めている。

「スポーツの未来はここにある」とあるが……(画像:エンハンスド・ゲームズのウェブサイトより)

今回のエンハンスド・ゲームズには、どのようなアスリートが参加するだろうか。筆者は、さまざまな理由で名誉を失ったアスリートが、金を目的に参加すると考えている。それは、エンハンスド・ゲームズの賞金額が大きいからだ。

1種目あたり最大50万ドルの賞金が設定されており、100メートル走や50メートル自由形で世界記録を更新すれば、100万ドルのボーナスが支給される。

主催者は、エンハンスド・ゲームズの放映権などで収益を上げるのだろう。その一部がアスリートに還元されるというわけだ。

では、主催者のアーロン・ディスーザはいったいどんな人物だろうか。

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