あなたの「ボーナス」は大丈夫?お金の判断をバグらせる「保有効果」の厄介さ 知れば差がつく!保有効果は「浪費」にも「節約」にもつながる

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自分が所有している中で手放せないモノの代表が、「高かった上にまだ使っていないモノ」だろう。無くしたり傷つけたりするのが不安で、ここぞという時に使おうと思っていたブランド小物が引き出しの奥で眠っていたりしないだろうか。

「高いお金を払ったからこそ使えない」とすれば、おかしなお金の使い方だ。しかも、使わない期間が長いほど、その人の中では新品同様となり価値は下がらない。本来は劣化が進んでいるはずなのに。

使用しないなら、傷みが少ないうちに早めに売ってしまったほうが合理的だ。ただ、売ろうと決心がついても、やはり保有効果が妨げになる。買った時の定価が基準になって買い取り価格を決めたくなるからだ。しかし、買い手にとって、あなたがいくらで買ったかは関係ない。あくまで、その商品に対して払っていい金額かどうかで決まる。

モノやジャンルにもよるが、手放すなら新しいほうが高値で売れるのだが、保有期間が長いほど持ち主側の思い入れが強くなり、買い取り価格とのギャップに唖然とする羽目になる。かくして、ずっと使わなかった「高かったモノ」は、結局、安値にしかならない。

「お金をかけたモノ」も要注意。モノといっても実物とは限らない。例えば、かなり昔に加入した終身払いの医療保険やがん保険など。今でも役に立ってくれる保障内容ならいいのだが、短期入院がメインになった現状にあっていなかったり、通院治療が保障の対象になっていなかったり、見直しが必要なケースもある。

しかし、「解約するなんて、これまで払った保険料がもったいない。せめて一度くらい保険金を受け取ってからにしよう」と思うのが人情だ。気持ちはわかるが、いざという時あまり役に立たない保険にお金を払い続けることはムダでしかない。これまで払ってきた金額にこだわるより、それを手放して今の治療体制にあった保険に替え、本当に困った時にしっかりお金が受け取れるようにしたほうが、何倍もトクだろう。

コツコツ貯めたお金を減らしたくないのも「保有効果」

モノでも特典でもステイタスでも、いったん手にしたものは手放しがたいもので、それゆえにムダな支出を引き起こす原因になる。

節約の敵と言ってもいい保有効果だが、裏を返せば「まとまった預金があると使えなくなる」心理にもつながる。貯蓄のコツとして、「とにかく100万円を貯めるべし」と聞いたことはないだろうか。コツコツ積み立てを続け、総資産額が100万円を超えれば、その頃には貯蓄習慣が身についているので、順調に資産を増やしていけるという意味なのだが、保有効果の観点からも一理ありそうだ。

自分の口座に100万円という数字を見ると、この桁数を絶対に減らしたくないと感じる。いったん手にした金額に、このうえなく価値を感じるのは、まさに保有効果だろう。それを使うとすれば、よっぽどの時、ここぞという使い道でなくてはならない。「所有するモノを手放したくない」という節約の妨げになる心理が、皮肉にもムダ遣いを排除してくれる。せっかくならうまく利用したいもの。

ボーナスを受け取ったら、早めに生活口座とは別の口座に移したほうがいい。その数字を目に焼き付ければ「減らしたくない」心理がくすぐられ、引き出す気持ちにならないかもしれない。

松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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