日本史上初めて進む「中国人の大量移住」 日本居住の中国人は20年でほぼ倍増の89万人に!

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1980年代からの改革開放の時代には、財を積んだ者は子弟を海外留学に送って足場を築いた後、自分も海外に静かに移住するようになった。このせいで、今ではカナダ、オーストラリアだけでも300万人を超える中国系住民が定住し、うち半分程度は中国本土から移住したと推定されている。

日本にも古来、混乱を逃れて移住してきた中国人は多い。秦の始皇帝の子孫を名乗る秦氏がそうだし、一族の長の秦河勝は聖徳太子の側近ともなり、蘇我氏と結び付き、さらに稲荷神社に至るまでその跡を残す。そして清朝末期には、東京の神保町近辺に多数の中国人留学生が集まって、「欧州の科学・学問を漢字で」勉強していた。

中国人移民がもたらす機会とリスク

その中には、後の中国の周恩来首相もいたし、現代中国建国の祖とされる孫文も日本に出入りし、日本人有志から大量の資金・兵器支援を得ていた。留学生の多くは、日本が1915年に「対華21カ条要求」を中国に突き付け、権益譲渡を要求した時、怒って帰国し、抗日運動に身を投じる。

そして今、日本に住む中国人はコロナ後に急増し、2003年の46万人から2023年には89万人と、ほぼ倍増している。中国での不動産市況の崩壊と、近年の円安で、中国人が日本の不動産を購入する例も急増している。この上、もし台湾に侵攻して失敗し、経済・社会が荒れるような事態になれば、日本への難民渡航を斡旋する業者が増えて、カネも技能も持たない中国人が壊れかけた漁船などで大量に日本に「漂着」するケースが増えるだろう。

中国人の大量の定住は日本史上初めてのことだが、これは日本にとって機会とリスクの双方をもたらす。企業でのIT化、AIの開発で後れを取っている日本にとっては、技能や起業意欲を持つ中国人の定住はプラスになる。労働者不足、あるいは国際化への対応力不足に悩む日本の企業にとっても、プラスになる。集団で動く日本人と個で動く中国人は、マインドが正反対なのだが、人種的には親和性もある。

日本、韓国、台湾、ベトナム、シンガポール、華僑といった「東アジア」の人間たちが余計な対立をやめて団結すれば、それは世界でのメジャーな勢力になる。そのために、日本で定住する中国人にはゴミ出しなど、他者のルールをまず尊重してもらいたいが。

(執筆者:河東哲夫)

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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