「俺がルールだ!」 “感覚”で部下をねじ伏せる無能な上司の病理と対処法

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このような状態が続けば、リーダーがやる気をなくし、場合によっては嫌気が差して辞める事態を招きかねないことは、少し考えればわかりそうなものだ。そうなれば、ここの部署が回らなくなるという最悪の事態も想定できるはずだが、羨望と嫉妬にさいなまれていると、合理的思考ができなくなる。だからこそ、リーダーを含めて部下の反論をすべて封じ込めようとするのである。

上司の嫉妬から身を守るために

一般に、反論を封じ込めようとするのは、自分に自信がなく、言い負かされたらどうしようという不安を抱えている人である。逆に、たとえ反論されても言い返して当の相手だけでなく周囲も納得させられるだけの自信がある人には、反論に耳を傾ける余裕があることが多い。

ここで取り上げた上司は、前者の典型のように見える。しかも、リーダーに対する羨望と嫉妬が強く、合理的判断ができない。そのうえ、社長の遠縁というコネもある。こういうタイプへの対処法は非常に難しい。

ただ、実害をこうむっているのであれば、それを少しでも減らすべく対処しなければならない。最大の実害は、会議で反論が許されないため、上司の提案に賛成するしかなく、その提案を実行して失敗に終わったら、責任を押しつけられることだろう。このことに対しては、毅然と対処すべきである。

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少しでも反論されると、上司の機嫌が悪くなることは踏まえたうえで、それでも最低限の指摘だけはしておくほうがいい。指摘の仕方としては、「あくまでも一般論ですが」「今回の案件と直接の関連はないかもしれませんが」といった枕詞をつけて、上司の提案をそのまま実行したら問題が生じる可能性をできるだけ具体的に伝えるのだ。

さらに、指摘した内容を文書で残しておく、ときには録音しておくことが望ましい。これは、社長に虚偽の報告をされて、責任を押しつけられそうになる事態に備えた防衛策だ。

なお、最大の被害者はリーダーである。上司が有能な部下に嫉妬することはまれではない。その結果、つぶされることも飼い殺しにされることもあるので、わが身を守るためには逃げるのも一手だろう。部署異動を願い出る、場合によっては転職するのが賢明ではないか。実力も実績もない遠縁の男性を「英語が話せる」というだけの理由で雇って、管理職に就かせるような社長が牛耳っている会社に明るい未来があるとは思えない。

片田 珠美 精神科医

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かただ たまみ / Tamami Katada

広島県生まれ。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。京都大学博士(人間・環境学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。2003年度~2016年度、京都大学非常勤講師。臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。著書に『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)、『賢く「言い返す」技術』(三笠書房)、『他人をコントロールせずにはいられない人』(朝日新書)など多数。

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