「俺がルールだ!」 “感覚”で部下をねじ伏せる無能な上司の病理と対処法
それだけではない。この上司はやたらと会議を開きたがり、終了時間を気にせず自分の感覚でダラダラとしゃべる。厄介なことに、上司の提案に対して部下が少しでも批判めいた言葉を口にしたり反対意見を述べたりすると、とたんに機嫌が悪くなり、感情的になって攻撃する。そのため、部下は賛成するしかなく、会議は上司の提案や意見を追認するだけの場になっている。
もっとも、賛成したらしたで、困ったことになる。上司の提案を実行して、うまくいかなかったら、社長に「会議で部下が強引に推し進めたんです。部下の戦略ミスです。私は『大丈夫か?』と疑問を投げかけたんですが……」などと言い訳して、部下に責任転嫁するからだ。
責任を押しつけられた部下としては、「上司が提案したんじゃないですか。僕らは賛成するしかなかったから、そうしただけなのに、こっちの責任にされたら困ります」と言い返したいところだろうが、形だけにせよ賛成したのは事実なので、何も言えない。
「拒絶過敏性」による打たれ弱さ
全員が賛成するように上司が仕向けるのは、部下に共同責任を負わせたいという思惑のためだろう。全会一致で賛成という形にしたほうが、社長に報告しやすいし、より多くの部下に責任を押しつけられる。こうした責任転嫁は自己保身のためであり、ある意味では合理的な防衛戦略といえよう。
ただ、部下の批判や反対意見に過剰反応し、感情的になって攻撃するのは、根底に「拒絶過敏性」が潜んでいるからかもしれない。「拒絶過敏性」は、他人からちょっとでも注意されたり批判されたりすると、自分の人格を全否定されたように受け止めやすい傾向である。そのせいか、周囲からすればそんなに大したことではなさそうな指摘であっても傷つき、落ち込んでしまいがちな打たれ弱さがしばしば認められる。
この上司が部下の反論を必要以上に封じ込めようとするのも、実は「拒絶過敏性」による打たれ弱さがあり、それに自分でも薄々気づいているがゆえの防衛戦略ではないかと疑いたくなる。こういう疑いを抱くのは、上司がとりわけリーダーに対して厳しく、それをリーダー自身だけでなく、彼以外の部下も認識している状況があるからだ。
これは、とくにリーダーからの反論に対する恐れが強いためだろう。その一因として、ここの部署ではリーダーが実務経験が一番長く、人望もあることが挙げられる。実質的にリーダーがほとんどの業務を仕切っており、上司がいなくてもここの部署は何とか回っているらしい。そのおかげで、この上司も安穏としていられるというのが現状のようだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら