しかし、プーチンの動きはこれと異なる。停戦後のイギリス・フランス軍などの停戦監視部隊の派遣へ強い反対を表明している。しかし、要求はこれに留まらない。具体的には、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟放棄などを改めて要求した。
またウクライナに対し、ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナの4州(ドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソン)やクリミア半島をロシア領として、国際的に承認することも求めている。
複雑化する停戦への道筋
この結果、停戦の実現に至る道筋はより複雑化しており、アメリカとロシア、ウクライナの3者による合意達成を難しくしている。プーチン政権が本気で停戦実現に臨んでいないことを示していると筆者はみる。
ゼレンスキーは、2024年末に現在ロシア軍が占領している地域について、武力での奪還は図らず、将来的に外交交渉を通じて、取り戻す方針を示している。ここで彼が想定しているのは、1940年に旧ソ連に併合されたバルト3国の独立の経緯だ。
独ソ間の秘密議定書に基づいてソ連が併合したが、アメリカは当時、併合の現実は受け入れたが、国際法的には認めなかった。
3国は1991年のソ連末期の混乱の中で独立を果たした。ウクライナとしては、こうした歴史的前例を念頭に、将来的な外交的奪還を目指している。
しかし、ウクライナとしては懸念がある。今後、完全停戦交渉が行き詰まった場合、トランプがプーチンへの譲歩として、ウクライナに対し占領地をロシア領として認知することを求めて来る可能性だ。
今回の失敗を受け、トランプがどう巻き返してくるのか。第2幕があるのは必至だ。
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