プーチンは今回の電話会談で、トランプ氏に対し米欧からのウクライナへの軍事支援の停止も求めた。結果的にトランプ氏は受け入れる姿勢を見せなかったとみられるが、今後も、完全停戦提案の受け入れの条件として、強く支援停止を求めてくるのは必至だ。
トランプ氏は今後どう対応するのか。ウクライナのゼレンスキーや、イギリス、フランスなどウクライナを支援する欧州有志国も注視している。
今回の電話会談の結果に、トランプ氏はショックを受けていると筆者はみる。直前に訪ロしてプーチンと真夜中の会談を行ったアメリカのウィットコフ中東担当特使からの報告を踏まえ、自分が直談判すれば、完全停戦で同意を取り付けられると踏んだからこそ、電話会談を行ったのだろう。
トランプの面目丸つぶれ
会談前に停戦合意に楽観的見通しを示していただけに、面目丸つぶれだ。この失望ぶりを物語る動きがある。関係筋によると、通常は電話会談直後にウクライナや西側同盟国に対し、アメリカ政府から会談結果についてブリーフが行われるが、本稿執筆時点でそれがまだ行われた形跡がない。どう説明するか、トランプ政権は苦慮しているとみられる。
侵攻の現状を総合的に俯瞰すれば、トランプ政権もプーチンが停戦に否定的なことはわかっていたはず。しかし、ルビオ国務長官はじめ側近らが一様にトランプ流の「取引外交」をほめそやす中、通常の電話首脳会談の前に行うはずの相手国の出方について、トランプ政権は詳細な分析を怠ったのだろう。スパイ出身のプーチンの冷徹な外交手腕に冷水を浴びせられた格好だ。
また今回の電話会談では米ロ間に、停戦に至るアプローチに大きな溝があることがはっきりした。
通常、交戦状態の国同士が和平に向かう場合、2段階で物事は進む。まず比較的単純な条件で停戦合意に進む。その後、本格的な和平実現に向け、詳細な協議を進めるというのが通常の手順だ。当初、アメリカからの安全保証のある停戦を求めていたゼレンスキーも最終的には安全保証を受けないままアメリカからの30日間の完全停戦に応じた。
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