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プーチンが設定した対アメリカ3つの政策に阻まれたトランプの休戦交渉、失敗に終わったその先は

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  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長
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これこそ、ルールの➀に当たる。ロシアとウクライナは、それぞれ互いのエネルギー関連施設を攻撃しているが、真冬が終わったこの時期、攻撃を止めても軍事的には大して意味はない。この合意では、当然ながら地上戦は対象にならない。激しい戦闘が続く軍事状況は、事実上現状のままになった。

また両首脳は互いに専門家グループを設置して、完全停戦について引き続き協議を重ねることになった。しかし、首脳レベルで達成できなかった完全停戦について、専門家協議で打開の道が容易に開けるとは考えにくい。交渉は長引くだろう。これがルールの②に当たる。

最後に➂だが、今回の電話会談でこれに当たるのはプーチンが提案し合意した両国間のアイスホッケーの試合開催だ。停戦問題にはまったく関係ないが、トランプ氏との関係が緊密であることを誇示する狙いだ。

プーチンが想定した通りの停戦交渉

こうして見ると、今回の電話会談はプーチンが事前に想定していた通りの結果になったと言える。

「30日間の無条件の完全停戦」というトランプ提案は、プーチンにとってまったく受け入れられないものだ。電話会談直前、ロシア軍は2024年8月初め以降、西部クルスク州の一部を占領していたウクライナ軍をほぼ撃退することに成功した。

第2次世界大戦でナチス・ドイツに侵略されたスターリン以降、外国軍隊に領土を奪われた初めてのロシア指導者という屈辱をようやくはらす可能性が出てきた。

2025年5月9日の対独戦勝記念日を控え、プーチンとしてはさらに軍事的戦果を重ねて失墜していた「強い指導者」のイメージを再び国民にアピールしたいところだ。クルスク州に配備している約6万人規模といわれるロシア軍部隊を、早く他の戦線に転戦させることを狙っている。

しかし、本稿執筆時点で実際にはクルスク州から、ウクライナ部隊を完全には追い出せていない。プーチンは2025年3月12日にクルスクのロシア軍の拠点を視察した。本来はこの際に、クルスク州全体の奪還宣言を行う予定だったが、見送らざるをえなかった。

80周年に当たる2025年の戦勝記念日を控え、プーチンには30日間の完全停戦に応じる余裕はないのが実情だ。

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