ついに目覚めた欧州、日本はまだ眠り続けるのか あのドイツも「約80兆円の財政出動」決定へ
一方で、もし関税賦課でインフレが上振れるとしても、FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策を大きく変えるには至らないと考えている。なぜなら関税引き上げ率が想定よりも高まり、インフレ率を一時的に高めても、同時にそれは経済成長にブレーキをかけるためだ。
トランプ政権の政策対応が今後どうなろうと、「年内のいずれかには利下げが必要」とのFRBの判断は変わらないだろう。FRBの政策対応と、成長を高める財政政策が繰り出されることで、トランプ政権下でマクロ安定化政策が機能不全となるリスクは低い、と筆者は予想している。
ドイツは憲法改正、約80兆円の財政出動決定へ
「トランプ2.0劇場」にアメリカ株市場が翻弄される中で、世界の株式市場を見渡すと、ドイツなどの欧州株が3月に最高値を更新するなど高パフォーマンスが目立っている。2025年初からの欧州株の上昇は、ウクライナ戦争終結への期待に加えて、トランプ政権の誕生で欧州域内での軍事費を大きく拡大させる政治的な動きが明確になっていることが大きな要因だ。
欧州、中東地域での安全保障の関与を低下させるアメリカの動きが、トランプ政権でより顕著になる中で、欧州がロシアに対峙するための安全保障について力を入れざるをえないのは必然的な流れである。欧州の政治家は、現在が歴史的な転換点にあることを認識しているということだろう。
とりわけ、中核国のドイツでは、2月23日に行われたドイツの総選挙で保守連合のCDU・CSU(キリスト教民主・社会民主同盟)が勝利した。今後は4月中旬までをメドに、CDU党首のフリードリヒ・メルツ党首が首相となり、SPD(社会民主党)なども含めた連立政権が発足する。
すでに協議の中では、同国の財政赤字を抑制する債務ブレーキについての緩和、防衛・インフラ投資のための特別基金(5000億ユーロ=80兆円程度)に合意していたが、14日には第4党である緑の党の同意もとりつけ、憲法改正に必要な議会の3分の2以上の賛成が濃厚となった(18日に下院で採決予定)。
この特別基金は10年程度の期間で使われるとみられる。1年あたりにすれば500億ユーロで、これは同国の名目GDPの1.2%に相当する規模に達する。
つまりGDPの1%以上の追加的な財政支出が、防衛関連費用を中心に支出される可能性が高い。欧州はトランプ政権からの軍事費拡大要求を受け入れて、ドイツを中心に緊縮的な財政政策の大転換が始まったことを意味する。
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