ついに目覚めた欧州、日本はまだ眠り続けるのか あのドイツも「約80兆円の財政出動」決定へ

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2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、ドイツ経済はほぼゼロ成長の経済停滞が続いていた。ロシアに対してエネルギーを依存していた状況が一変する中で高インフレに直面したにもかかわらず、拡張的な金融財政政策が講じられなかったことが、経済停滞をもたらした最大の要因だった、と筆者は考えている。

今回、欧州は自らの力で生き残るために、安全保障強化などの投資拡大を進める政治決断が実現した。2024年からECB(欧州中央銀行)が利下げを続けて金融緩和に転じている中で、緊縮財政姿勢が拡張方向へと大きく転じるのだから、2025年半ばから欧州経済の成長は回復すると予想される。

経済停滞が続くという見方が根強かった中で、2024年末にドイツの10年物国債の利回りは2%付近で低位安定していた。

だが、一連の流れを受けて2025年3月には2.8%台まで大きく上昇した。株式市場では、ドイツの代表的な株式指標であるDAX指数が昨年末から約10%上昇しており、先進国の中で一人勝ちの様相を呈している。これまで眠り続けている欧州が覚醒するとの期待が、金融市場で適切に反映されているといえる。

覚醒しない日本は今後も経済停滞の懸念

一方、好調な欧州株市場と対照的な値動きとなっているのが、日本株市場だ。TOPIX(東証株価指数)の年初来(昨年末比)の騰落率は約-2.5%と欧州市場に比べ大きく下回る(3月14日時点)。

特に2024年7月末に日本銀行が追加利上げを行った後から、日本株市場のパフォーマンス劣化が続いている。2024年初から日本の経済成長にブレーキがかかっているにもかかわらず、日本銀行の利上げに「前のめり」な姿勢は変わらない。

そして、石破茂政権も減税による拡張的な財政政策を事実上却下したことで、経済成長を高めるマクロ安定化政策がまったく実現せずに、経済成長にブレーキを踏む引き締め政策が続いている。

当初、短命政権になると思われた石破政権は発足から約半年が経過しようとしているが、支持率が低迷する中で7月の参議院選挙も次第に近づき、存続が微妙な状況にある。このまま石破政権が存続するか、あるいは次の政権が誕生しても、日本の政治家の多くが欧州のように覚醒しないとしたら、国内経済は今後も停滞を続けるだろう。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。本記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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