ミニにジャガー、ランドローバー…過去と現在を比較して見る「英国車は難しい」と思うワケ

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では、ブリティッシュブランドの中で、デザイン改革が成功したといえる例はあるだろうか。個人的には前出のランドローバーがそうだと考えている。

2012年に登場した「レンジローバー・イヴォーク」の初代モデル(筆者撮影)
2010年(日本では2012年)に登場した「レンジローバー・イヴォーク」の初代モデル(筆者撮影)

1990年代、BMW時代からフォード時代にかけてのランドローバーは、「レンジローバー」と「ディスカバリー」のデザインを刷新したものの、スクエアで背の高いフォルムはそのままだった。

その流れを一新したのが、2008年にコンセプトカー「LRX」として発表され、タタ・グループ入り後の2010年に市販車としてデビューした「レンジローバー・イヴォーク」だ。

コンパクトでパーソナルなレンジローバーという位置づけも斬新だったが、それを強調すべくルーフを低め、ウエッジシェイプを取り入れるなど、スポーティな雰囲気が強調された。

それでいて、端正なフロントマスクや連続したサイドウインドーなど、「レンジローバーらしさ」も継承されていたのだ。

単に「レンジローバー」と称されるフラッグシップモデルの最新型(筆者撮影)
単に「レンジローバー」と称されるフラッグシップモデルの最新型(筆者撮影)

レンジローバーとしては低価格であり、SUVとしては環境負荷が抑えられていたこともあって、イヴォークは世界的にヒットした。すると、ほかのランドローバー各車も、このデザインエッセンスを取り入れることになった。

個性的であるがゆえの難しさ

ジャガーも今回のTYPE 00の前に、初代「XF」でデザイン改革を行っている。しかし、あのときは、それ以前がクラシカルだったので変化の幅が大きく、ついていけない人も多かったようだ。

クラシックなイメージを一気にモダンな路線に変更したジャガー「XF」(写真:Jaguar)
クラシックなイメージを一気にモダンな路線に変更したジャガー「XF」(写真:Jaguar)

その点ランドローバーは、レンジローバーもディスカバリーも初代の頃から、モダンなデザインをまとっていたことが功を奏した。フラッグシップのレンジローバーはそのままに、新しい車種としてイヴォークを提案したことも巧妙だった。

オフロード性能をある程度わりきり、思い切ってスポーティに振った走りは、それまでのランドローバー各車から見ると異質だったが、フレッシュなデザインとは合致していた。21世紀に生まれた英国車のデザインの中で、いまなお高く評価すべき1台であると思っている。

「イヴォーク」とメカニズムを共有するランドローバーブランドの「ディスカバリースポーツ」(筆者撮影)
「イヴォーク」とメカニズムを共有するランドローバーブランドの「ディスカバリースポーツ」(筆者撮影)

英国はときに大胆な革新に打って出ることがある。 イヴォークをきっかけに成功したランドローバー、大柄なEVを主力としたロータス、TYPE 00でブランドの再構築を図ろうとしているジャガーは、その点ではどれもが英国車らしい。 

ただそれが、保守的であることを好むユーザーの気持ちと合致するかはわからない。 カーデザインの難しさについて、「英国車がもっとも難しいのではないかと」と述べた理由が、この3つのブランドからもわかるのではないだろうか。

【写真】過去と現在の英国ブランド車12モデルを改めて見る
森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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