では、ブリティッシュブランドの中で、デザイン改革が成功したといえる例はあるだろうか。個人的には前出のランドローバーがそうだと考えている。

1990年代、BMW時代からフォード時代にかけてのランドローバーは、「レンジローバー」と「ディスカバリー」のデザインを刷新したものの、スクエアで背の高いフォルムはそのままだった。
その流れを一新したのが、2008年にコンセプトカー「LRX」として発表され、タタ・グループ入り後の2010年に市販車としてデビューした「レンジローバー・イヴォーク」だ。
コンパクトでパーソナルなレンジローバーという位置づけも斬新だったが、それを強調すべくルーフを低め、ウエッジシェイプを取り入れるなど、スポーティな雰囲気が強調された。
それでいて、端正なフロントマスクや連続したサイドウインドーなど、「レンジローバーらしさ」も継承されていたのだ。

レンジローバーとしては低価格であり、SUVとしては環境負荷が抑えられていたこともあって、イヴォークは世界的にヒットした。すると、ほかのランドローバー各車も、このデザインエッセンスを取り入れることになった。
個性的であるがゆえの難しさ
ジャガーも今回のTYPE 00の前に、初代「XF」でデザイン改革を行っている。しかし、あのときは、それ以前がクラシカルだったので変化の幅が大きく、ついていけない人も多かったようだ。

その点ランドローバーは、レンジローバーもディスカバリーも初代の頃から、モダンなデザインをまとっていたことが功を奏した。フラッグシップのレンジローバーはそのままに、新しい車種としてイヴォークを提案したことも巧妙だった。
オフロード性能をある程度わりきり、思い切ってスポーティに振った走りは、それまでのランドローバー各車から見ると異質だったが、フレッシュなデザインとは合致していた。21世紀に生まれた英国車のデザインの中で、いまなお高く評価すべき1台であると思っている。

英国はときに大胆な革新に打って出ることがある。 イヴォークをきっかけに成功したランドローバー、大柄なEVを主力としたロータス、TYPE 00でブランドの再構築を図ろうとしているジャガーは、その点ではどれもが英国車らしい。
ただそれが、保守的であることを好むユーザーの気持ちと合致するかはわからない。 カーデザインの難しさについて、「英国車がもっとも難しいのではないかと」と述べた理由が、この3つのブランドからもわかるのではないだろうか。
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