「勉強する子どもは近視になりやすい」は間違い なぜか日本では知られていない近視の予防法

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神保:近視が予防できるなんて、早く知りたかったですね。目の話で思い出したのですが、最近、軍用技術の開発や研究を行うアメリカのDARPA(国防高等研究計画局)では、合成生物学を応用して人間の能力を拡張させていく研究が進められています。

ロボティクスで人間の動きを助けるだけではなく、外科手術や薬を飲むことで筋肉を増強させたり、脳波を読み取り機械とつなぐブレイン・マシン・インターフェースも盛んに研究されたりしています。国家安全保障という点から見ると、いよいよそうした人体の領域まで、軍事研究が入っていきつつあるのを感じました。

窪田:実は近視研究の始まりには、軍事的な背景が関係しているんです。最初に問題になったのはオランダの空軍パイロット養成学校で、入学するときの身体検査では視力が良かったのに、2年ほどトレーニングをする間に近視になる人が出てきました。膨大な予算をかけて戦闘機のパイロットを養成したにもかかわらず、視力の低下によって飛行できなくなってしまうんです。

神保:戦闘機パイロットの育成には莫大な費用がかかります。せっかく育てたのにもったいないことですよね。

窪田:少なくとも入学時点までは近視ではないのに、なぜ途中で近視になる人とならない人がいるのか。それが20世紀に始まった、近視研究のきっかけです。その後の研究によって、たとえ目の中心部の視力が良くても、周辺部に遠視が起こっている人はのちに視力が悪くなることがわかっています。

神保:なるほど、近視の研究と軍事領域には深い関係があるのですね。

じんぼ・けん/ 慶応義塾大学総合政策学部教授、公益財団法人国際文化会館常務理事、アジア・パシフィック・イニシアティブ(API) プレジデント。 慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了(政策・メディア博士)。専門は国際政治学、安全保障論、アジア太平洋の安全保障、日本の外交・防衛政策。 タマサート大学(タイ)で客員教授、国立政治大学(台湾)で客員准教授、南洋工科大学ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)客員研究員を歴任。政府関係の役職として、防衛省参与(2020年)、国家安全保障局顧問(2018~2020年)、外務省政策評価アドバイザリーグループ委員などを歴任。主な著書に『検証安倍政権:保守とリアリズムの政治』(共著、中央公論新社、2022年)など多数(写真:神保氏提供)

裸眼視力を高めることが国防強化につながる?

窪田:中国などで近視研究が進んでいるのもそうした軍事戦略的な背景があるのではないかと考えています。その点、日本では近視があまり重視されていない。神保先生は安全保障の観点から、目の重要性についてはどう見ていますか?

神保:自衛隊では入隊にあたり裸眼視力が0.6以上、矯正視力が0.8以上、パイロットでは矯正視力が1.0以上となっています。視力は任務中の視認において決定的に重要ですし、移動する標的を捉える動体能力も欠かせません。

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