「身近な人とは恋愛できない」若者たちの事情 現代人の結婚と出産を阻んでいる3つの要因

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これが、冒頭の「子どもを持つにはまず結婚」という“常識”につながる。2022年7月号の年金広報(ウェブ版)に掲載された神奈川県立保健福祉大学の山崎泰彦名誉教授のコラムによると、出生に占める婚外子の割合は、日本では2.4%なのに対して、フランスでは61.0%、スウェーデン54.5%、イギリス48.2%、アメリカ40.0%、イタリア35.4%、ドイツ33.3%に上る(イギリスは2017年、その他は2019年)。

「法律用語の『嫡出子 』 『非嫡出子 』も、『正しい子』『正しくない子』というニュアンスが生まれてしまいます」と阪井准教授は指摘する。だからか、「結婚=子どもを産み育てる」という意識も強い。

「戦前までさかのぼると、『子どもを残すことが生きる意味』というイエ制度の考え方で、個人より家が大事でした。戦後はアメリカの影響を受け価値観が変化していきますが、規範的な意味でも制度的な意味でも、そして経済的な要因からも、女性にとっては結婚が就職だと言われていました。

それが均等法施行後のバブル期に、子どもを産まないDINKsが、新しい生き方として脚光を浴びた。しかしその言葉がすっかり死語になったように、自由な生き方など言っている余裕がなくなってきたのが今と言えます」

新しいルールができれば受け入れる日本人

制度としては80年近く前になくなったのに、残り続けたイエ優先の価値観は、経済的に厳しくなり変化が激しくなった今、一部で強化されてしまっているのかもしれない。しかし、希望はある。

「日本は制度ありきでルールを破ると叩かれる傾向はありますが、新しいルールができれば受け入れるのではないでしょうか。介護保険制度の導入後も、『日本の美風が壊れる』などと批判していた人たちは、どこへ行ってしまったのかと思うほどになりました」と話す阪井准教授。

カップルのあり方や、子育てする保護者の多様性が制度として認められれば、ライフスタイルを無理に合わせなくてよくなる。恋愛や結婚にも踏み切りやすく、子育てもしやすくなるのかもしれない。「子どもを産み育ててほしい」と若者に望む前に、彼らが息をしやすくなるように、まずは「失敗していい」というメッセージを大人は送るべきなのではないだろうか。

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阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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