「政府が果たす役割」についての考え方も正反対、現代アメリカを貫く「驚くほど真逆」な2つの正義

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そもそも共和党と民主党の掲げる「正義」は大きく異なるという(写真:chanawat3753/PIXTA)
ふだん私たちが何の気なしに口にする「正義」という言葉ですが、玉川大学名誉教授の岡本裕一朗氏によれば、「正義」の理解の仕方というのは、歴史的にも地理的にもいろいろ違っているそうです。
それではいったい何を正義と考えるのか、そして、そもそも正義とはいったいどういうことなのでしょうか。そのヒントを岡本氏の著書『知を深めて力にする 哲学で考える10の言葉』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

「公平性」から展開するロールズの「正義」

アメリカの政治哲学者、倫理学者のジョン・ロールズ(1921〜2002)は、1971年に『正義論』を発表したのですが、そこで展開されているのは、"公平性"、つまりfairnessをめぐる議論です。

正義がなされるには、どういう分配が可能なのか、という問いに答えるかたちで、彼独特の"公平性"の理論が展開されています。「公平性としての正義」―これがロールズの構想する「正義」という考えです。

ロールズの考え方はこうです。他の人の社会的な状態や経済的な状況などが分からないよう「無知のベール」をかぶせ、一番恵まれない人が最悪の状態に陥ることを回避しようとする(これを「マキシミン・ルール」といいます)と、参加者はどういう選択をするか、というのです。

つまりロールズはある種、純粋な思考実験をしているわけです。少し分かりづらいかもしれませんが、そこでは2つの原理が導かれるとします。

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