「政府が果たす役割」についての考え方も正反対、現代アメリカを貫く「驚くほど真逆」な2つの正義

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第1の原理(自由原理)は、各人が広範で自由な制度に対等にアクセスできることです。

第2の原理(格差原理)は、社会的・経済的不平等は、次の2つの条件を満たすように構成されなければならないことです。

①そうした不平等が各人の利益になると無理なく予期しうること。

②全員に開かれている地位や職務に付帯すること。

注目すべきは、ロールズが公平を考えるのに、「不平等」からアプローチしていることです。たとえ不平等があっても、各人の利益になると無理なく予期しうることが大事だ、というのです。

「弱者保護」を命題とするリベラルな民主党

たとえば、失業保険や生活保護など、まさかの場合のセーフティネットが張られていれば、心おきなく働き、暮らすことができます。

いま栄華を極めている人も、明日には路頭に迷っているかもしれません。そういう人だって最低保障があれば安心でしょう。

だれしもが富者になれるわけではありませんが、だれしもが貧者になる可能性は常にあります。

ロールズはリベラルな立場で、社会を構成する普遍的な原理を案出しようとしたわけです。その背後には1960年代、70年代の公民権運動があり、それは黒人や女性などの弱者保護を提唱したものでした。ロールズはその運動に理念的な支柱を立てようとしたわけです。

アメリカは1930年代からリベラルの伝統があり、弱者保護が中心的な命題として受け継がれてきました。そのためには、国の関与(大きな政府)が想定されていますが、実際の政治では民主党の政策がそれに則っています。

リベラルは経済政策の他、道徳的にはLGBTQの諸権利や妊娠中絶なども認める立場です。

このような、リベラルの側から「正義」に現代的な解を提出したのがロールズといえます。それに賛成するにも、あるいは反対するにも、過去の正義をめぐる議論を知っておくのは、自分の意見を構築するのに欠かせない作業ではないか、という気がします。

「正義」という点で、1つだけ注意しておきます。ロールズは「正義」を「善」から区別し、「公正(fairness)」と理解しました。

リベラリズムの考えでは、個々人が追求するものが「善」であるのに対して、「正義」はむしろ人々の間の公平性と考えられるのです。

次ページより個人を重視する「リバタリアン」
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