電通を襲った再びの悪夢、「世界進出」の落とし穴 M&A連発の海外で巨額減損、過去最大赤字に
その後は東京本社ビルなどの不動産売却や本業の広告ビジネスが貢献し、業績は底を打ったかに見えた。

しかし2023年に入り、潮目が怪しくなる。広告ビジネスを主軸とする中国などで市況が悪化し、同年12月期にはアジア・太平洋セグメントに関連するのれんの全額と無形資産の一部について、678億円の減損損失を計上した。
2024年には、データ分析を売りにした海外でのDX・コンサルティングビジネスも苦境を深めていく。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利上げ以来、案件受注に要するリードタイムが長期化する中、コロナ禍によるDX・コンサル特需自体も一服。既存顧客の予算は縮小傾向となり、欧米における同ビジネスが業績の足を引っ張り、今回の巨額減損を招いた。
“サイロ化”が進んでしまった
もっとも、海外事業の不振の要因は外部環境の変化だけではない。
グローバルの顧客企業の間では目下、一気通貫のマーケティング戦略に基づき、広告やDX・コンサルなどの各ソリューションを包含した一体提案へのニーズが高まっている。ところが電通グループは、急拡大していたDX・コンサル需要に追いつくうえで、事業別の収益管理・目標設定を徹底することが有効と判断。各事業をそれぞれのCEO(最高経営責任者)が統治する独立経営を推進した。
結果として、一体提案を望む顧客に対しても、グループの各部門が個別で提案を持ち込んでしまう状況に発展。一気通貫のソリューションを推し進めるフランスの広告大手のピュブリシス・グループなどに、案件の獲得で水をあけられることとなった。
近年、伝統的な広告ビジネスからコンサルなど非広告領域への拡張を掲げてきたことがあだとなった面も否めない電通グループ。五十嵐社長は「サイロ化が非常に強く進んでしまった」と認めたうえで、「サイロ化を完全に解消し、われわれのポートフォリオを劇的に変えていくプロセスに時間がかかっている」と吐露した。
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