電通を襲った再びの悪夢、「世界進出」の落とし穴 M&A連発の海外で巨額減損、過去最大赤字に

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こうした状況を踏まえ、決算と併せて発表された2027年までの新中期経営計画では、M&Aに偏重した過去の成長戦略を一定清算し、事業規模の大きい日本とアメリカへの集中度を引き上げていく方針が示された。

まずは不振ビジネスの一掃だ。累計投下資本が100億円を上回り、2期以上連続で赤字の市場に、「徹底的かつ迅速な打ち手を実行」することにより、2026年12月期には赤字市場ゼロを目指す。その過程では、国・地域単位での人員削減や撤退も選択肢となりそうだ。

海外M&Aに傾注する傍らで、実は日本セグメントは4期連続で過去最高の売上総利益を更新し、前期に最高益を達成している。広告事業の堅調ぶりに加え、DX・コンサル領域の成長も寄与した。とくに近年は、パーパス策定など経営層に対するコンサルの収入拡大が顕著となっている。

日本の電通は、「ビジネスプロデューサー(BP)」と呼ばれる職種が広告クライアントの御用聞きとなり、司令塔として自社のデータ分析部門と広告制作部門、広告枠を押さえるメディア部門を束ねることで、より最適なマーケティング支援を図っている。

BPは顧客企業の経営企画と事業部との調整などをしながら広告案件を積み重ね、企業の奥深くまで入り込んでいくことを強みとする。その過程で、顧客が抱える経営課題の解像度も上がっていく。ある電通のBP社員は「パーパス策定から広告戦略まで一気通貫で提供できれば、広告に対するクライアントの納得感も高いはずだ」と胸を張る。

日本モデルをアメリカに移植

そんな絶好調の日本モデルを移植していくのがアメリカだ。2024年には、「海外版BP」ともいえる「インテグレーテッド・クライアント・リード(ICL)」というポジションを導入。顧客企業とグループの間に立ち、広告やDX・コンサル部門を束ね、ニーズの把握と一体提案の推進を図る。

ターゲティング戦略にも修正が入る。グローバル企業の全世界での広告展開を対象とした超大型案件では、世界最大手級の広告会社と対峙すると、スケールメリットで劣ることからネット広告枠の調達レートを下げきれず、クライアントの希望する価格水準を満たせないケースも少なくない。

規模を武器にした競争は、2024年12月に発表された、世界4位のオムニコム・グループによる同6位のインターパブリック・グループ買収によって、激化の一途が予想される。こうした事業環境を踏まえ、グローバル企業でもアメリカ国内に限定された広告展開や、アメリカのみで事業展開する大手地場企業のマーケティング支援など、格上の広告会社が拾いきれない中~大型案件のウエートを高める方針だ。

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