対中関税がトランプの首を絞める至極当然の道理 アメリカの労働者には百害あって一利なし

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中国に対して10%の追加関税を発動したトランプ大統領。しかし、その決断は自らの首を絞めかねない(写真:ロイター/アフロ)
アメリカが中国から輸入しているのは電子製品が中心だ。これらはもはやアメリカで製造することはできない。したがって、関税を課しても国内生産が増えることはない。国内価格が上がり、消費者の負担が増加する。これに対処するため、サプライチェーンを中国からアジア諸国に移す動きが加速化されるだろう――。野口悠紀雄氏による連載第141回。

中国に追加関税を課した2つの理由

トランプ政権は2月4日、中国からのすべての輸入品に10%の追加関税を発動した。ドナルド・トランプ大統領が中国を特別視するのは、第1に貿易赤字が最大であるため、そして第2に「中国の台頭が問題だ」と考えるからだろう。

追加関税によって貿易赤字を削減し、輸入で失われたアメリカの雇用を取り戻し、アメリカを再び強国にするという。はたして、その思惑どおりになるだろうか。

答えは、まったく逆だ。アメリカの消費者の負担を引き上げるだけで、同国の雇用は増えないだろう。

アメリカの対中関税が大きな問題を引き起こすことは、アップルのスマートフォン「iPhone」への影響を考えると明らかだ。

iPhoneの多くは中国で生産されている。だから、アメリカで販売されている iPhoneは中国からの輸入品だ。したがって、関税の対象となる。

第1次トランプ政権が対中関税を引き上げたとき、アップルはアメリカ政府と交渉して、当初は関税対象から除外された。しかしその後、アップル製品も課税されることになった。

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