定員割れでも「選抜」は必要?岐路に立つ大学入試 少子化で多くの大学が存亡の危機に陥るが…

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学校推薦型だけの選抜にしてしまうと、高校に通わず「高等学校卒業程度認定試験」によって大学入学資格を得る人や社会人、過年度卒業生(浪人生)などは受験できなくなってしまう。「ユニバーサル段階」にある大学は、広く万人に開かれたものなのだから、他の審査方法を用意しておく必要がある。

求められるのは「学ぶ姿勢」

それに、大学は、高校新卒者を対象とした教育機関から、生涯学習の場としてもこれまで以上に活用されるべきだろう。「リスキリング」などと政府が号令をかけなくても、生涯にわたって学び続ける風土を築きたい。そのためにも働きながら学べるように「働き方改革」によって十分な余白時間を確保できるような社会になることを期待したい。

全入化した大学とはいえ、大学教育は高校までの学校教育とは異なる。学校教育では、与えられた目標や方法に準じて学習する。一方、大学では、自ら学ぶ目的やテーマを設定して学習する。つまり、大学ではより主体性を求められるのだ。

よって、「大学教育にふさわしい準備」とは、大学で主体的に学ぶ姿勢であり、全入化した大学であっても学生には学ぶ姿勢が求められる。しかし、主体的に学ぶかどうかは学生の問題であり、全入化した大学では、それができるという受験生の申し出には入学を許可してもいいのではないだろうか。

受験生の申し出だけではダメだというのであれば、高校に限らず、身近で受験生本人をよく知る人からの推薦が得られればいいのではないか。全入化している大学でわざわざ大学が「意欲」を審査する必要はないだろう。これがこれからの全入化した大学の選抜試験になるのだろう。

こうしたことを、前々回で言及した「東洋大学問題」をきっかけに、今後、大学と高校が協議をして、文科省の調整の下、2027年度以降の「大学入学者選抜実施要項」を策定してもらいたい。

後藤 健夫 教育ジャーナリスト

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ごとう たけお / Takeo Gotou

1961年愛知県生まれ。南山大学卒業後、学校法人河合塾に就職。独立後は、大学コンサルタントとして、有名大学などの AO 入試の開発、入試分析・設計、情報センター設立等に関与。塾・高校の進学アドバイザーも。

その後、早稲田大学法科大学院設立に参加。元・東京工科大学広報課長・入試課長。経済産業省「未来の教室」とEdTech研究会専門委員。岡山大学『教育の実質化断行と基盤体制構築による「学びの構造化」の実現』事業外部評価委員などを歴任。

現在、執筆の傍ら、大学募集広報や高校の大学進学支援、「探究学習」のカリキュラム・教材開発、授業改善、地域の教育活動の改善等にも従事。高校や大学、地方自治体での講演、ゲストスピーカー多数。

『セオリー・オブ・ナレッジ―世界が認めた「知の理論」』(ピアソンジャパン)を企画・構成・編集。探究学習について『学習マッピング』(新曜社)等に寄稿するほか、大学入試や大学・高校教育に関する記事執筆多数。

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