「目のマッサージ」「眼筋ほぐし」は効果があるのか 「目薬」の効果の多くも感覚的なものにすぎない
目の筋肉に関する話としては、「眼筋を鍛えると、老眼を防止できる」という話を耳にすることもあるのではないだろうか。しかし、そこにはまったく合理性がないようだ。
目の筋肉を鍛えても意味はない
たしかに人間の目は、毛様体筋を緊張させたりゆるめたりして水晶体の厚みを変えることでピントを調節している。毛様体筋が緊張し、水晶体が厚くなると屈折率が上がり、近距離で焦点を結ぶようになって、網膜上でピントが合うのである。遠くのものを見るときは逆で、毛様体筋はゆるみ、水晶体は薄くなる。
「なんだ、やっぱり毛様体筋の力が肝心なんじゃないか」と思われるかもしれませんが、そもそも水晶体そのものに復元力がなければ意味がありません。老眼は水晶体が固くなること、イコール復元力の低下です。毛様体筋をいくら収縮させても、水晶体の形が変わりにくくなるのが問題なのです。ですから毛様体筋を“鍛えて”も仕方がありません。(209ページより)
また、もうひとつ重要なポイントがあるという。
毛様体筋はチン氏帯という細い糸を介して水晶体とつながっています。ちょっとややこしいですが、遠くを見るときには毛様体筋はゆるみ、チン氏帯は外に引っ張られ、水晶体も引っ張られて薄くなります。近くを見るときには毛様体筋が緊張して小さくなりますから、チン氏帯はフニャッとゆるみ、水晶体は復元力で厚くなります。(209ページより)

糸は、引っ張るときには力を加えることができるが、ゆるんだ糸でなにかを押すことはできない。つまり、仮に老眼の人が毛様体筋を鍛え、強く緊張させられるようになったとしても、近くを見るときに肝心の糸(チン氏帯)はゆるんでいるわけだ。
そんなところからも、毛様体筋を鍛えることに意味がないことがわかるだろう。
老眼を防ぐ目の体操というのを見たこともあります。残念ですが、科学的根拠はまるでありません。大人の視力が回復するメソッドなどという話もありますが、そんなことを証明している学術論文は見たことがありません。(211ページより)
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