蒲田から蒲田へ「たった800m」の新線に集まる期待 渋谷~羽田空港「新空港線」メリットと実現への課題

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東急多摩川線・下丸子駅と踏切(写真:node/PIXTA)

また渋谷からの直通運転に関して、「東急多摩川線の改良」が必要とされるかもしれない。

現状の東急多摩川線は、多摩川駅~蒲田駅間5.6kmの全線が地上を走り、約20カ所の踏切が存在する。18m車両・3両編成の電車がコトコトと駆け抜ける「住宅街のローカル線」だ。

しかし東横線から乗り入れる車両は「20m車両・8両~10両編成」であり、3両編成対応の各駅を全面改良しない限り、停車できない。沿線の住民は「渋谷行きの電車があっても停まる訳でもない」「大編成の列車のせいで、踏切の待ち時間だけが長くなった」「地下に移転した蒲田駅から地上に出るのが面倒」といった印象を抱くだろう。

特に下丸子駅周辺の踏切は、安全対策の必要を国交省に指摘されており、大田区は直近でも高架化への調査に620万円を投じている。ここは「連続立体交差事業」などで国交省に補助を要請してでも、「新空港線」と同時に東急多摩川線の高架化、もしくは地下化の必要があるのではないか。

再開発で「失ってほしくないもの」

東急・JR蒲田駅エリアは建物の老朽化が進んでいる(画像:大田区資料より)
蒲田の下町には、数多くの銭湯が存在する(写真:筆者撮影)
蒲田温泉・併設食堂の名物「釜めし」(写真:筆者撮影)

大田区は「新空港線」の建設と同時に蒲田地区一帯の再開発を推し進めており、築50年を超えた駅ビル「グランデュオ蒲田」「東急プラザ蒲田」に補助金を出してでも、建て替えを促している。

蒲田エリアは駅ビルに限らず建物の老朽化が激しく、道路も軒並み狭い。街として全体的に防災の問題を抱えており、再開発は避けて通れないだろう。ただ、その中でも「蒲田らしさ」は失ってほしくないものだ。

戦前には松竹の映画撮影所がある街として知られた蒲田は、いまも裏路地に一杯飲み屋が連なり、夜ごとに賑わいを見せる。周囲には昔ながらの銭湯が何軒も軒を連ね、地下から湧く温泉「黒湯」からの湯上がりには牛乳だけでなく、特製の「かき氷入りビール」(ゆ〜シティー蒲田・季節限定)や釜めし(蒲田温泉)まで味わえる……。

【2025年1月31日20時40分追記】初出時、映画撮影所の企業名に誤りがありましたので、記述の一部を修正しました。

新空港線の建設と一帯の再開発で、蒲田の街は様相を変えてしまうだろう。それは仕方ないとして、街のどこかに「猥雑でドキドキする下町・蒲田」がどこかに残っていてほしい。そう考えるのは、筆者の勝手な願いなのだろうか。

宮武 和多哉 ライター

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みやたけ わたや / Wataya Miyatake

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護にリアルに対処中。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅(既刊2巻・イカロス出版)など

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