蒲田から蒲田へ「たった800m」の新線に集まる期待 渋谷~羽田空港「新空港線」メリットと実現への課題

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しかし現状では、羽田空港~渋谷間の移動は京急本線・JR山手線の乗り継ぎを要する。一方でJR東日本は2031年の開業を目指して羽田空港~東京駅間の「羽田空港アクセス線」建設を進めており、この新線でアクセスできる「東京駅エリア」「銀座」や、京急空港線から他社乗り入れで直通する「浅草」との地域間競争で、東急の牙城である「渋谷」が埋没しかねない。東急はこういった背景もあり、渋谷~羽田空港間が繋がる「新空港線」建設の話に乗った。

たった800mの鉄道新線「新空港線」は、大田区に「区内移動の改善」、東急に「羽田空港からの新ルート獲得」といったメリットをもたらす。だからこそ、東急は第三セクター会社「羽田エアポートライン」への「39%出資」という形で投資を行い、大田区も「約360億円の建設費用を拠出」という、思い切った負担を打ち出すことができたのだ。

新空港線には課題も

京急空港線の車両(写真:おおね/PIXTA)
東急多摩川線・下丸子駅横の踏切は、クルマ・人の往来の危険性が指摘されている(写真:筆者撮影)
新空港線・第一期工事、第二期工事のイメージ(画像:大田区資料より)

ただ、「新空港線」建設までに、さまざまな課題が立ちはだかっている。

まず、羽田空港との直通でネックとなるのが「線路幅」だ。今回の開業区間に次ぐ第二期区間と位置付けられている「京急蒲田駅~羽田空港間の直通」(大鳥居駅の近辺で京急空港線に接続)を行おうにも、東急多摩川線が1067mm、京急が1435mmと幅が違うため、直通運転はまったく不可能だ。

現状では複数案が検討されているものの、車輪の位置を動かせる「フリーゲージトレイン」案は車両製造のコストや技術的問題で国内の実用化ができておらず、線路を3本敷いて幅の違う鉄道を直通させる「三線軌条」案でも、乗り入れ区間の工事による京急空港線の長期運休は避けられない。

妥協案として挙がっているのが、京急蒲田駅~大鳥居駅間にも新線を敷設し「大鳥居駅での乗り換え」とする案だ。

しかし、京急が大鳥居駅~羽田空港間での極度の混雑に悩まされる上に、何より東急が求める「渋谷~羽田空港ルート」のメリットが薄れてしまう。そもそも京急蒲田駅~大鳥居駅間の新線は京急空港線とほぼ並行するため、「京急側が協力するメリットがない」ことが最大の問題だ。

直近の大田区議会では「京急空港線との効果的な接続方法を検討するため、専門業者による検討を実施」(2024年9月・決算特別委員会)との回答にとどまっており、京急との今後の協議が注目される。

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