高田さんは介護士として働く母親に育てられましたが、A高校のほかの生徒たちも、シングルマザーやシングルファザーなど、ひとり親に育てられた子どもたちが多かったようです。
退学者も多く、1年で学校に興味がなくなったり、妊娠が発覚したりして、学校を辞めた生徒もいました。
学校では万引きが横行
犯罪が多い地域であったことは前述の通りですが、学校内でも、万引きが横行するなど、いい教育環境とは言えない状況でした。
例えば、移動教室の場合、ロッカーに鍵をかけ忘れた人が1人でもいたら、すぐに盗難に遭うため、先生たちは常々「絶対に鍵をかけて教室を出なさい」と生徒たちに言っていたと高田さんは語ります。
「私が学校に在学していたとき、私のいたクラスだけで、『(私物が)ない!ない!』と騒ぎになったことが3〜4回ありました。全クラス・全学年で同じようなことが頻繁にあったので、先生たちも声掛けを徹底していました」
高田さんもこうした盗難に備え、ブランドものではない財布に少額のお金だけ入れて、学校に通っていました。
一方で、金髪やリーゼントといった、いわゆる「不良」系の生徒は少なく、学校全体で窓ガラスが割れたり、けんかが頻発していたわけではなかったようですが、校則は緩く、中には喫煙をしていた生徒もいて、校内では落ちている吸い殻を見かけたこともあったようです。
そんなA高校の授業は、「各科目のレベルは初歩的なもの」。高田さんによると、英語はアルファベットから授業を開始し、社会のテストでは、首相の写真を見て名前を当てはめるという、簡単な内容でした。
宿題はみんな一切やってこないために、どの科目でも出ることはなく、夏休み・冬休みの課題すらありませんでした。
また、先に述べたように、大学進学者はわずかだったA高校。大学受験では、一般入試を受ける人はあまりおらず、指定校推薦を利用する生徒が多かったようです。
高田さん自身は剣道部の個人戦・団体戦で県大会に行った経験や、自費でニュージーランドに3週間行った経験を生かし、推薦で志望した大学に進学することができました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら