三菱UFJ銀行「貸金庫事件」が開けたパンドラの箱 「現金」を貸金庫の中に入れていたのはなぜ?
この到底合理的とは言えない行動から浮かび上がるのは、「表に出せない金」ではなかったのかという疑念だ。そのためか、多額の現金が窃取されたにもかかわらず、被害届があまり出ていないという。
金融ビジネスに詳しい弁護士は、「一般には公正証書や不動産の権利書などを入れている事例が多いと考えられる」としたうえで、「相続時の資産をごまかすため、あるいは現金での報酬など課税対象となる所得をごまかすために格納しているケースはあるかもしれない」と話す。
今回の事件の舞台となったのは、前述のとおり都内2カ店で、そこにある一部の貸金庫を勝手に開けたものとみられる。わずか2カ店の一部貸金庫に十数億円近い現金があったことを考えれば、同行の全支店の貸金庫、さらには銀行全体の貸金庫にはいったいどれほどの現金が潜んでいるのか。
「格納できない」としている銀行はほぼない
他行の貸金庫規定を見ても、「格納できないもの」として明確に現金を指定している事例はほとんどない。貸金庫の契約審査は預金口座の作成審査よりも厳しいと考えられるが、地域金融機関では「利用料を支払えばどなたでも利用できます」と強調しているケースもある。
仮に巨額の「脱税マネー」が全国の金融機関の貸金庫に潜んでいるのであれば、見過ごすことはできない問題だ。
金融庁は三菱UFJ銀行に対して、銀行法24条に基づく報告徴求手続きを進めている。貸金庫の一部に多額の非合理な現金が入れられていたことを把握した以上、貸金庫業務を営む全国の金融機関を対象に、利用実態の調査に乗り出すことも考えられる。貸金庫に対する税務当局の視線も厳しくなりそうだ。
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