三菱UFJ銀行「貸金庫事件」が開けたパンドラの箱 「現金」を貸金庫の中に入れていたのはなぜ?

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「貸金庫の総点検を始めている」。今回の事件をきっかけに、ある大手行では貸金庫業務のリスクを洗い出し、カギの管理や利用時の顧客対応、さらには見落としがちなリスクへの対応について各支店の実態調査を進めているという。

実は貸金庫業務は、年間数万円の利用手数料を徴収できる一方で、厄介な問題を抱えるようになっている。例えば、貸金庫の存在について「本人以外に通知不可」とする契約を結んでいる場合、本人が認知症などになった際には「開かずの扉」となってしまう。

支店の統廃合が進む中で、貸金庫の解約のお願いも「煩雑な業務になっている」(大手行幹部)。その際、「開かずの扉」となっている貸金庫では本人の所在がわからないケースが珍しくないため、連絡を取るのも一苦労だ。

また、いくら場所貸しとはいえ、「中身が何かわからないものを銀行が預かっていいのか」(別の大手行幹部)というコンプライアンス上の問題も浮上している。

貸金庫業務そのものが揺らぐ事態

金利が上昇した現在、貸金庫のような手数料ビジネスよりも、貸し出しや有価証券運用などにリソースを割くほうが収益性は高まる。金融庁などの要請により管理の手間が大幅に増すようなことになれば、貸金庫業務から撤退する金融機関が出てきても不思議ではない。

しかし、金融機関が相次いで撤退し、金融庁の監督権限が届かない民間企業が貸金庫ビジネスの主体となれば、それこそ脱税や犯罪収益の現金が潜む温床となりかねない。

さまざまな課題や問題をあぶり出すことになる今回の貸金庫事件。三菱UFJ銀行の元行員が開けたのは「パンドラの箱」だったとも言えそうだ。

北山 桂 東洋経済 記者

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きたやま かつら / Katsura Kitayama

1975年群馬県生まれ。日本農業新聞や博報堂アイ・スタジオ(コピーライター)、「週刊金融財政事情」編集長などを経て、2024年4月東洋経済新報社入社。

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