40歳、年収1000万円の仕事を辞めた人の「本音」 「収入は10分の1」でも全く後悔がない理由

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(撮影:山中散歩)

そうした人生を実現するために、加藤さんは戦略的に動いている。キャリアブレイクのもうひとつのテーマとして、「自分の価値を提供できる分野を見出す」こと、言い換えれば「レッドオーシャンを避け、ブルーオーシャンを見つける」ことを意識し、行動してきたのだ。 

「レッドオーシャンで戦うと、過当競争が起こり、そこで自分の価値を出すことが難しくなる。労力をかけずに自分の価値を出して稼ぐことができる分野を見つけることで、無理せず働いていきたいと思っているんです」 

ブルーオーシャンを見つけるために、仕事や家族との時間のあいまに、今後のキャリアの「種まき」となる活動も行ってきた。例えば、興味がある分野の業務に単発で取り組んでみたり、イベントに足を運んだりしているらしい。 

その結果、加藤さんは「地方の行政広報」という分野に可能性を見出しつつある。 

「都庁を退職した後、全国各地の自治体の広報研修に関わる機会をいただいたことを通して、『地方では、広報の担い手が圧倒的に足りてない』と感じました。であれば、僕が役に立てることもあるんじゃないかな、と」 

まだ明確に意思決定をしたわけではないが、地方の行政広報に関わりながら働く選択肢にどのようなものがあるか、加藤さんは考え始めている。 

お金の不安も解消された 

しかし気になるのは、「今後もフルタイムで働かないとしたら、収入は大丈夫なのか」ということである。その点を加藤さんに尋ねると、「フルタイムで働かなくても、収入面でもキャリア面でもやっていけそうな手応えを感じている」のだという。 

加藤さんもかつては、「なるべくたくさん稼いで、たくさん貯金をしなければ」と考えていた。しかし今振り返ればその不安は、将来の見通しが立っていなかったからこそ生まれたものだった。キャリアブレイクはいくつかの点で、その不安の解消に役立った。 

ひとつは、退職してからも思ったほど貯金が減っていないこと。加藤さんの収入は、都庁に勤めていたときの10分の1ほどになったという。しかし家計を見直したところ、固定費を削減することができ、「生活コストを抑えれば、収入が減っても暮らしていける」という手応えを得た。 

加えて、将来設計を考えたことも大きかった。 

「家族の将来設計を考えたところ、『僕らは子どもに中学受験をさせることも、住宅をローンで買うこともしなそうだな』という考えに至ったんですよ。だから、世間で言われているほどお金をかけなくても生活していけるメドが立ったんです」

こうして将来の見通しが立つことで、資金面での不安がなくなっていった。だからこそ、「お金を稼ぐために、無理をして働く必要はない」と思えるようになっていったのだという。 

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