結党60年の公明党「つなぎ役」斉藤代表の苦悩 来夏の「政治決戦」、党勢回復に"進退"を懸ける

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そもそも公明党にとって、今回衆院選で代表就任直後の石井氏が、初挑戦の埼玉14区で落選したこと自体が「全く想定外」(党幹部)だった。このため、後任の人選は当初、斉藤、岡本両氏に加え、山口氏の再登板までも取り沙汰されるなど迷走を極めたが、「最終的には、自民中枢を含め与野党に幅広い人脈を持つ斉藤氏に白羽の矢が立った」(同)のが実態。斉藤氏が、前首相として石破政権の「後見役」となっている岸田氏と同じ広島県選出の初当選同期組として、親交を深めてきたことも背景にあるとみられている。

「広島3区」問題も自公連立の“厄介な火種”に

ただ、斉藤氏が出馬している広島3区は、もともと1996年の小選挙区導入以降の8回の衆院選で自民系候補が7回当選した選挙区で「旧岸田派の地盤」ともみられてきた。このため、自民の地元県連は、「公明枠が『固定化』することへの不満を募らせている」(幹部)とされ、次期衆院選に向け、同区を巡る自公両党の候補者調整が課題となるのは確実とみられている。

そもそも、公明党が2021年衆院選で、比例中国ブロック選出の斉藤氏を「与党統一候補」として広島3区に送り込み、自民党広島県連が公募を経て3区候補者に決めていた石橋林太郎氏が、比例中国ブロックに回された経緯がある。

しかも、その際、両党本部と両県組織の4者が協議して決めることで合意していた今回の衆院選候補について、公明が2023年1月に県組織での協議を経ずに斉藤氏を3区で公認したことが、自民県連の強い不満につながっている。今回、斉藤氏が党代表になったことで、次期衆院選でも「公明党の選挙の顔」になるため、公明側は「広島3区は譲れない」(選対幹部)との立場だが、「こちらも譲れないので、交渉難航は確実」(自民県連)とみられている。

すでに石橋氏は、自民党本部に「早く、広島3区支部長に私を選んでほしい」と要求し、党本部は対応に苦慮しているのが実情だ。これに対し、斉藤氏は「両党で話し合って決める。私はそれに従うだけ」と繰り返しているが、今後の政局展開次第では来年7月の衆参同日選の可能性もささやかれるだけに、「年明け以降に斉藤氏の『選挙区問題』が自公連立の“厄介な火種”にもなりかねない状況」(政治ジャーナリスト)で、そのこと自体が斉藤氏の苦悩をさらに深刻化させることは否定できない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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